電話の向こうから、少しの躊躇もなく「うん、結婚した」という返事が返ってきた。
たった数文字の言葉だったが、即答で、迷いは全くなかった。
むしろ羽田和彦の方が、電話を手に持ったまま呆然と立ち尽くし、表情が固まっていた。
いつもクールな態度を貫いている羽田和彦が、こんなに醜い表情をするのは初めてで、彼の容姿とは不釣り合いだった。
「お前、三島悠羽か?」
しばらくして、羽田和彦はようやくそう言葉を発した。
電話の向こうの相手は、明らかに羽田和彦のこんな幼稚な質問に答える気はなく、ただ「自分で分からないのか?」と言った。
「分かるよ。ただ少し違和感があってな!お前が、三島悠羽が、三島様が!まさか結婚するなんて!」
羽田和彦はようやく正常に戻ったようだ。最初の衝撃から立ち直り、話し方もようやく滑らかになり、もう吃らなくなった。