第352章 杉本グループ(36)

神様だけが知っている、水瀬英明の心の中を駆け抜けた無数の罵詈雑言。運が悪かったことに、三島悠羽の妻に出くわしてしまい、彼にはこうするしかなかった。

杉本瑠璃は水瀬英明がこの件を逃げ切れるとは思っていなかった。羽田和彦がここにいる以上、水瀬英明は逃げようがない。

それに……いくつかのことについては、水瀬英明が逃げようとしても逃げられないだろう。

なぜなら……杉本瑠璃はすでに後手を打っていたからだ。

水瀬英明はまず一千万円の小切手を杉本瑠璃に書き、残りの金額については時間をかけて調達する必要があると言った。

杉本瑠璃も無理に彼を追い詰めることはせず、小切手を受け取り、金額を確認して満足げに頷いた。「この頭金は先に受け取っておきます。一週間の猶予を与えますので、それで…十分でしょう?」

杉本瑠璃は笑みを浮かべ、その時の気分と口調は先ほどとは全く異なり、まるで変面のように別人になっていた。

水瀬英明は不機嫌な顔をして、真っ黒に沈んでいた。今日はもう遊ぶ気分ではなくなり、先に帰ることにした。

しかし、彼が立ち去ろうとした時、羽田和彦が彼を引き止めた。

「このまま帰るつもりですか?」

水瀬英明は眉をひそめた。今日は十分に不運だったのに、今度は羽田和彦に止められ、当然語気が良くなかった。「どうした?帰らないで、ここに住むとでも?」

羽田和彦は軽く笑い、腕を組んで言った。「杉本瑠璃との勘定は済ませましたが、私たちの間の勘定も済ませる必要があるのではないですか?」

水瀬英明は周りを見回した。個室は確かにめちゃくちゃに荒らされ、散乱していた。

最初は、これは全て杉本瑠璃が壊したものだから、なぜ自分が賠償しなければならないのかと言おうとしたが、原因を思い出すと、もう何も言えなくなり、諦めるしかなかった。

「ここでの損害は全て私の勘定に入れてください。」一億円も賠償したのだから、もう少し多くても気にならなかった。

借金の多さは気にならない。

羽田和彦は笑みを浮かべ、とても満足そうだった。「よろしい。北澤さんは実に潔い方ですね。後ほど今日の破損費用を計算して、請求書をお送りします。」

水瀬英明は適当に手を振った。「好きにしろ。」

そう言って、水瀬英明は手下たちを連れて急いで立ち去った。もう一秒でもここにいたくなかった。