その後、杉本瑠璃と羽田和彦はしばらく話をして、帰る準備をした。
「もういいよ。引き止めないから。君の友達たちは心配で気が気じゃないみたいだし、今も下で待ってるから、会ってきたら?」
羽田和彦は斎藤きくこを見かけて初めて、杉本瑠璃の身に起きたことを知った。彼が駆けつけたのは偶然ではなく、意図的なものだった。
ただ、彼が予想していなかったのは、自分が手を下す必要もなく、杉本瑠璃が自力で解決できたということだった。
どうやら杉本瑠璃が今日水瀬英明についてきたのも、水瀬英明を罠にはめるためだったようだ。
水瀬英明は一億円も騙し取られて、しばらくは立ち直れないだろう。
杉本瑠璃は余計な話はせずに立ち去り、階下で友人たちに状況を説明すると、彼らは杉本瑠璃が無事なのを確認して、やっと安心した。