杉本瑠璃の杉本グループがY市に進出する件については、以前のパラダイスのように大々的に宣伝され、誰もが知るところとはならなかった。
それどころか、今回の杉本グループは非常に控えめで、誰にも通知せずに、静かに営業を開始した。
杉本グループの現在の従業員数は多くないが、日向あきらの綿密な選考を経て、人柄も業務能力も優れた人材が選ばれている。
もちろん、杉本グループにはもう一人、以前から杉本瑠璃と共に事業を展開したいと言っていた北澤亮太がいる。
その日、北澤亮太は杉本瑠璃に単独で呼び出され、これまでにない出来事に非常に驚いていた。
道中、北澤亮太は好奇心を抑えきれず、ずっと質問を続けていた。
「蒼、一体どこに連れて行くんだ?」
北澤亮太は好奇心と少しの興奮を感じていた。
「着けば分かるよ。君はずっと私と一緒に頑張りたいって言ってたでしょう?今日、その機会を与えるわ」
杉本瑠璃はゆっくりと答え、北澤亮太は非常に興奮した。
「え?本当に?今日から一緒に働けるの?」
北澤亮太はさらに興奮して、急いで尋ねた。「じゃあ、どんな業界で働くの?何か考えがあるの?」
杉本瑠璃は微笑んで、少し神秘的に答えた。「着いたら分かるわ」
北澤亮太は杉本瑠璃を横目で見て、「ちぇっ!まだ神秘的な雰囲気出してさ。まあいいや!どうせすぐに答えが分かるんだし、焦らなくても」
すぐに、杉本瑠璃は高層ビルに到着した。今では杉本グループのビルとなっており、改装後は本当に立派な様相を呈していた。
北澤亮太も世間知らずではなかったが、なぜ杉本瑠璃が彼をここに連れてきたのか疑問に思っていた。
「蒼、ここで何をするの?もしかして、このビルの中でオフィスを見つけて、僕の意見も聞きたいの?」
結局のところ、北澤亮太は杉本瑠璃がビル一棟を所有しているとは考えもしなかった。多くの会社は、最初はせいぜい一フロアのオフィスを持つ程度で、それでも十分な出発点だった。
杉本瑠璃は口元を緩めて微笑んだが、彼の質問には答えず、ただ北澤亮太をエレベーターに案内した。
エレベーターはすぐに28階に到着し、扉が開くと杉本瑠璃は北澤亮太を連れて中に入った。
北澤亮太は少し戸惑っていた。ここには明らかに既に誰かが働いているのに、杉本瑠璃はまるで自分の場所のように堂々と入っていった。