第365章 私が道場破りに来た!(9)

三島悠羽は羽田和彦が反応を示さないのを見て、続けて言った。「蒼は夫がいる身だ」

たった一言で、羽田和彦の言葉を全て封じ込めた。

その通り、杉本瑠璃には確かに夫がいる。しかも、その夫は今、目の前に座っている三島悠羽なのだ。

はぁ!

本当に……

羽田和彦は本当に困ってしまった。今は杉本瑠璃の夫が三島悠羽であって、自分ではないのだから仕方がない。

そうでなければ、こんなにも受け身になることも、立場がないこともなかったはずだ。

今では呼び方一つさえも奪われてしまうなんて、本当に……納得がいかない。

でも、まだ良かった。三島悠羽はそれだけを言っただけで、羽田和彦に杉本瑠璃のことを「お義姉さん」と呼ばせようとはしなかった。ただし、それは警告でもあった。

どうやら……自分の小さな思いは、三島悠羽に見透かされていたようだ。ただ呼び方で牽制してきただけなのだ。

羽田和彦は深いため息をつき、三島悠羽を睨みつけた。「見たことないよ。自分の奥さんが『戦場』に向かおうとしているのに、こうしてのんびり座っているなんて」

三島悠羽は微笑んで、ソファに寄りかかり、怠惰な様子を見せた。

「戦場?ふむ、その言葉の選び方はいいね、的確だ!でもね……誰の主戦場かによるよ!私の奥さんは決して損をする人じゃない。誰かと戦うときも、勝つことしかない。負けたことなんてないからね」

羽田和彦は一瞬考え込んだ。確かに三島悠羽の言う通り、杉本瑠璃は今まで負けたことがないような気がする。

ふふ、今回は面白くなりそうだ。

「もしかして……わざと水瀬家の方々に喧嘩を売りに行ったんじゃないの?」

羽田和彦はすぐに気づいた。先ほどの杉本瑠璃と三島悠羽の表情を思い返すと、何か変だと感じた。

これは絶対に策略だ!絶対に意図的なものだ。

三島悠羽は口元を歪めて笑い、軽く笑い声を漏らした。「羽田様も随分賢くなられましたね」

「お褒めに預かり光栄です!あなたたちのような人と長く付き合っていれば、賢くならざるを得ませんから」

二人は顔を見合わせて笑い、グラスを掲げて早めの祝杯を上げた。

一方、羽田真央は杉本瑠璃を連れて水瀬霧乃たちのところへ向かった。

すると、彼女たちはまだ話し続けており、さらに過激な内容になっていた。