三島悠羽は羽田和彦が反応を示さないのを見て、続けて言った。「蒼は夫がいる身だ」
たった一言で、羽田和彦の言葉を全て封じ込めた。
その通り、杉本瑠璃には確かに夫がいる。しかも、その夫は今、目の前に座っている三島悠羽なのだ。
はぁ!
本当に……
羽田和彦は本当に困ってしまった。今は杉本瑠璃の夫が三島悠羽であって、自分ではないのだから仕方がない。
そうでなければ、こんなにも受け身になることも、立場がないこともなかったはずだ。
今では呼び方一つさえも奪われてしまうなんて、本当に……納得がいかない。
でも、まだ良かった。三島悠羽はそれだけを言っただけで、羽田和彦に杉本瑠璃のことを「お義姉さん」と呼ばせようとはしなかった。ただし、それは警告でもあった。
どうやら……自分の小さな思いは、三島悠羽に見透かされていたようだ。ただ呼び方で牽制してきただけなのだ。