羽田和彦は杉本瑠璃を見つめながら、意地悪そうに言った。「蒼ちゃん、今日は誕生日パーティーに来たんじゃなくて、道場破りに来たみたいだね」
杉本瑠璃は遠慮なく笑いながら、素直に認めた。「その通り。私は誕生日パーティーに来たんじゃなくて、道場破りに来たの」
羽田和彦は杉本瑠璃に向かって親指を立てた。「さすが期待の新星だ。実力も潜在能力もある」
「お褒めの言葉、恐縮です」
杉本瑠璃はパーティー会場を見回し、三島悠羽の方を向いて尋ねた。「あなたが言っていた見物、いつ始まるの?」
「もう終わったよ」三島悠羽は淡々と答えた。
終わった?
杉本瑠璃は少し戸惑った。「いつ始まったの?私、まだ見てないのに、もう終わったの?」
「私は見たよ」
三島悠羽は微笑み、さっきの出来事に満足しているようだった。
杉本瑠璃は気づいて、頭を軽く叩いた。「もしかして、さっき水瀬玲奈が私にプレゼントを要求したことのこと?」
「物足りなかった?」
杉本瑠璃は少し困った様子で、三島悠羽が他のサプライズも用意していると思っていたのに、彼が言う見物というのが自分に関することだったとは。
まあいいか。
どうやら三島悠羽は最初から、水瀬玲奈がプレゼントの場面で彼女を困らせようとしていることを見抜いていたようだ。
同時に、杉本瑠璃がきっと水瀬玲奈を困らせる方法を持っていることも知っていた。
「随分と信頼してくれるのね。私が本当に何も持っていなくて、あなたの名義で適当なものを贈っちゃったらどうするの?」
杉本瑠璃が三島悠羽をからかうと、彼は全く気にする様子もなく言った。「私のものは奥様のもの、奥様の思う通りにしていただいて構いません。たとえ奥様が気に入らないものをあげたとしても、私が倍にして取り返してあげますから」
「ちっ、ちっ、ちっ!本当に甘ったるいわね。もう我慢できないわ。三島様、前はこんなに甘ったるい人だとは知りませんでしたよ!」
傍らで聞いていた羽田和彦は体の不調を感じ、三島悠羽がわざと自分に聞かせているんじゃないかと疑った。
ひどすぎる!
彼のような独身者に、どうしてこの二人がこんな風に独身をいじめるのを耐えろというのか?
三島悠羽は羽田和彦の方を向いて言った。「酸っぱいですか?私にはむしろ甘いと思うのですが。それとも羽田様の心が酸っぱくなっているのでしょうか?」