杉本瑠璃はその白髪の老人を見渡した。年は相当いっているものの、その精神状態から見ると、病人には見えなかった。
杉本瑠璃は少し困惑した。一体なぜ清水翔太は彼女をここに連れてきたのだろうか?先ほどのノックの暗号を見ると、単なる訪問ではないことは明らかだった。
しかし今、清水翔太は非常に静かにお茶を飲んでいて、これは杉本瑠璃の予想外だった。
まあ...来たからには仕方がない、清水翔太が何をしようとしているのか見てみよう。
一杯のお茶を、およそ30分以上かけて飲み、その間、清水翔太と老人は簡単な世間話をしていた。
その後、清水翔太はようやく立ち上がり、老人に別れを告げた。杉本瑠璃はさらに驚いた。
このまま帰るの?たった30分ここにいただけで、もう帰るというの!
この清水翔太は一体何をしようとしているのか?
杉本瑠璃と清水翔太は本当に立ち去り、老人は親切に玄関まで見送り、そっとドアを閉めた。
清水翔太は周りを見回した後、杉本瑠璃を隣の部屋へと連れて行った。今回はノックせず、鍵で扉を開けた。
素早く部屋に入り、杉本瑠璃を引き入れた。
杉本瑠璃は眉をひそめた。これは一体どういうことだろう?この清水翔太は今日は本当に奇妙で、普段のクールで落ち着いた様子とは全く違っていた。
「清水さん、これはどういう意味ですか?」杉本瑠璃は怒ってはいなかったが、清水翔太の一連の奇妙な行動に対して、少し疑問を感じていた。
もし単に一人の病人を救うだけなら、清水翔太がこのようなことをする必要は全くなかった。さらに、以前の三島悠羽の言葉や態度から、杉本瑠璃は奇妙な感覚を覚えた。まるで...人を救うことが想像していたほど単純ではないようだった。
あるいは、人を救うことは単なる口実に過ぎないのかもしれない。
清水翔太も知っていた。誰であれ、心に疑問を抱くだろうということを。
杉本瑠璃は先ほどの老人の家にいた時、ずっと黙っていた。彼が杉本瑠璃をこの部屋に連れてくるまで待って質問したことは、すでに十分冷静さを保っていたと言える。