009月光を独り占め、黒水通り_3

この本物の作品が出回れば、全国各地から大勢の人が集まってくるだろう。

偽物だと疑う者はいないだろう。結局、アジア最大の競売会社だし、黒水通りで競売会を開くなんて、誰も騒ぎを起こす勇気はない。

「オークション会場の招待状を何とか手に入れろ」と中村修は言った。

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翌日。

白川華怜は図書館に長居せず、木村浩がマルチメーターを届けさせたからだ。

彼女は祖父に「タイミングが悪かった」とはどういうことかを見せつけるため、家に帰ることにした。

12番バスが清水通りで停車し、白川華怜が黒いバッグを持って降りると、清水通りの雑貨屋の近くに人だかりができているのが遠くから見えた。

白川華怜が近づくと、群衆の外で見物していた白いタンクトップの男が手を震わせた。

「ぽとり」とタバコが地面に落ちた。

「山田隊長よ、彼らに聞いてみろ。私が法を犯したかどうかをな」群衆の中央で、黒服の中年男性がゆっくりと煙を吐き出し、タバコで涼粉の屋台の主人を指さした。「私が法を犯したと言えるのか？」

涼粉の屋台主は恐れおののいて首を振った。蹴り倒された屋台を片付けながら、「いいえ、違います！私が自分で倒しました！」

「ほう、じゃあお前は？」中年男性は二歩進み、手工芸品を売る男を指さした。

その男は地面に座り込んだまま、ただ必死に手を振るばかりだった。

彼は刺繍の靴を踏みつけ、最後に安藤宗次の前で立ち止まった。「お前は？お前には勇気があるか？」

安藤宗次は倒れた屋台を見つめ、首を振った。

「ほら見ろ」中年男性はようやく悠然と山田隊長を見た。彼は傲慢に言った。「私は何もしていないと言っただろう。山田隊長、まさか善良な市民を逮捕するつもりじゃないだろうな？」

「貴様...」山田隊長が手を出そうとしたが、仲間にしっかりと抱きとめられた。「やめろ、隊長！」

仲間は山田隊長の耳元で小声で言った。「あいつはあのサソリだ...」

山田隊長は冷静さを取り戻した。

サソリ。

彼らの内部指名手配リストのトップ10の一人で、よく黒水通りと国際間を行き来し、配下には傭兵出身者が多く、黒水路地バーを後ろ盾にしており、FBIですら手を出せないと言われている。

勢力は巨大だ。

サソリはこのような状況を予測していた。

彼は軽蔑的に山田隊長を一瞥し、彼の目の前でタバコを地面に投げ捨て、足で踏みつけた。「どうやら、山田隊長は私を捕まえるには別の方法を探さなければならないようだな」

その場にいた誰も口を開く勇気がなかった。

サソリはさらに傲慢に雑貨屋からすべてのタバコを持ち去り、堂々と清水通りを去っていった。

男が去った後、山田隊長は黙って周りの屋台の主人たちの片付けを手伝い、低い声でこう言った。「申し訳ない」

黒水路地バーの連中、二国間の公約処理所の者たち—

山田隊長には証拠がなく、確かに手の打ちようがなかった。

今日は陽城市の田中家が来ていても、黙って損害を被るしかなかっただろう。

白川華怜は遠くから、この一部始終を冷静な目で見つめていた。

白いタンクトップの男は彼女の視線に背筋が凍る思いをし、身震いして、急いでタバコを咥えながら屋台の主人たちの片付けを手伝い始めた。

明らかに白いタンクトップの男も「公約処理所」の厄介な連中の一人で、彼が片付けを手伝うのを見て、山田隊長は彼を一瞥し、さらに遠くの店主も見た。

周りの人々は徐々に散っていった。このような事件は清水通りでは珍しくなかった。

「華怜？」安藤宗次は片付けを終えると、通りの端に立つ白川華怜を見つけた。

近所の人々は安藤宗次の作る小物が好きで、彼は数日おきに露店を出していた。白川華怜は毎日図書館で遅くまで勉強していたため、彼が露店を出すのを見るのは今回が初めてだった。

「うん」白川華怜は冷静に応え、安藤宗次の荷物を受け取った。

「大丈夫だよ、おじいちゃんはもう慣れているんだ。破財は災いを免れるってね」安藤宗次は煙草入れを持ちながら、今日は明らかにいつもより多弁だった。「こういうことは滅多にないんだ。あいつは向こう側の人間で、ここにはあまり来ない。これからは外出の時は気をつけてね。私たち一般人は、なるべく彼らに関わらない方がいいんだ」

彼は白川華怜を慰めた。

白川華怜は再び素直に「うん」と答えたが、漆黒の瞳の奥は、ますます冷たくなっていった。

安藤宗次は彼女のことを全く心配していなかった。

夜11時。

安藤宗次の部屋の明かりが消え、白川華怜の部屋では、彼女が扇風機の最後のネジを締め終えた。

そして携帯電話を持って、そっとドアを閉めて外に出た。

清水通りの端にある橋を渡ると、一本の通りが目の前に広がっていた。金ぴかに輝き、夜の10時というのに昼のように明るく、入口には二カ国語で書かれていた—

黒水通り。

白いタンクトップの男はすでにここで待っていた。顔を上げると、この通りにそぐわない月白の長いドレスを着た少女の姿が目に入った。

「姉貴」白いタンクトップの男は近寄り、白川華怜にタバコを差し出し、ついでに火をつけた。

白川華怜は細長いタバコを指で挟み、とても無関心そうに、火が巻き上がり、煙がかすかに立ち上る中、だるそうに首を傾げた。「あいつはどこにいる？」