安藤秀秋はその気品のある子供を見て、最初は話しかけ方が分からなかったが、相手が素直に挨拶してくれたので、戸惑いながらもポケットにあった白川華怜のためのお菓子を全部木村翼に渡した。
明石真治は横で無表情に立っていた。
白川華怜と安藤秀秋を清水通りまで送り届けた後も、木村翼は白川華怜の服の裾を掴んで離さなかった。
明石真治は慣れていた。木村翼の行動はいつも奇妙だった。
彼は木村浩に報告した。
木村翼は腕時計にメッセージが届いてから、やっと白川華怜の服の裾から手を離した。
木村浩が到着した時には、白川華怜はもう帰っていた。
彼は実験室から出てきたばかりで、着替えもせずに、ただ面倒くさそうに手を伸ばして木村翼の車の窓をノックした。
木村翼は根に持つタイプで、彼を無視した。
相変わらず窓に寄りかかったままだった。
木村浩は落ち着いて言った:「この前MTSのレポートで見たんだけど、子供は夜更かしすると背が伸びないらしいよ」
木村浩の腰にも届かない木村翼は突然顔を上げた:「疲れた?」
「僕は疲れてないよ」木村浩は軽く彼を見て、真摯に尋ねた:「君も疲れてないでしょう?」
「ああ、もちろん私は疲れてないわ」木村翼は独り言のように話し始めた。「明石おじさんがきっと疲れてるって言ってるの。もし彼が疲れてるなら、今すぐ帰って先に寝かせてあげないと」
明石真治は無表情で:「はい、坊ちゃま。私は今とても疲れています」
**
陽城中学校。
白川華怜は月曜日に電車で帰り、火曜日の朝に安藤宗次に運動エネルギーの定理を説明してから、やっと学校に来た。
「隣の人」白川華怜はペンを回しながら、島田凜の方を向いて「生物のノートを貸してもらえる?」
黒いペンが彼女の白く長い指先で器用に回転していた。
島田凜は学習委員で、黒くて長い髪の毛と真っ白な肌をしていて、髪は顔と首の半分以上を覆い、毎日決まって制服の長袖長ズボンを着て、めったに人と話さなかった。
ただ机の中から二冊の生物ノートを取り出して白川華怜に渡した。
白川華怜はそれを受け取り、パラパラとめくった。ノートは綺麗に整理されていて、その中の一冊に写実的な絵を見つけた。両側に花が咲き乱れる路地を描いたもので、この写実的な画風は安藤宗次や安藤秀秋のものによく似ていた。