「松木おばさん、さようなら」
白川華怜は安藤秀秋が出てくるのを見て、礼儀正しく松木奥様に別れを告げた。
松木奥様は玄関に立ち、白川華怜たちが去っていくのを見送った。
彼女は車に戻り、携帯電話を手に取り、しばらくしてからようやく一つの番号をダイヤルした。
相手はすぐに出た。「松木奥様?」
白川明知だった。
松木奥様は運転手に発車を指示し、「白川社長、今華怜を見かけました。北区に戸籍を移すために来ていて、10時35分の列車です。今回帰ったら、もう白川家の人ではなくなります。あの子は子供っぽいところがありますから、白川執事を派遣して連れ戻されますか?」
電話の向こうで、白川明知はペンを置いた。
窓の外を見つめながら、白川執事から華怜が出て行ったと聞いてから、もう10日近く彼女の消息を聞いていなかった。