田中駆は少し間を置いて、あまり考えずに答えた。「僕は中村優香とペアを組むと思います」
彼は中村優香とは幼い頃から知り合いで、いつもペアを組んでいた。それに中村優香は確かに頭が良く、彼女とペアを組めば気を遣う必要もない。
今、彼女は白川華怜と対立している。
田中駆の意図は明らかに断りだった。
「この解答の方法は私が先生に見せましたが」と8組の担任は頷いて、それ以上は言わなかった。「江渡予備校の答案によく似ていますね。今後も似たような答案があれば、状況を見て彼女の意見を聞いて、できるだけ皆さんに共有したいと思います」
田中駆は一瞬驚いたが、結局頷いて、礼儀正しく担任に別れを告げた。
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明石真治は相変わらず木村翼とタピオカ店にいた。
毎日、白川華怜の下校を待ってから帰るのだった。
今日も同じだった。
ただし、白川華怜に別れを告げる時、彼女は彼をじっと見つめた。
確かに、明石真治は背が高くがっしりしていて、人を見る目は鋭いが表情は少し抜けている。
あまり賢くなさそうで、本当にゾウリムシみたいだ。
この共感は不思議なものだった。
明石真治は外に出てから思わず頭を掻きながら、白川華怜があんな目で見た理由が分からなかった。
白川華怜は木村翼の隣に座り、今晩配られた物理の問題を取り出してゆっくり見始めた。木村浩がくれたノートは役に立っていて、少なくとも今日は勉強がそれほど苦にならなかった。
物理というのはそういうもので、公式や定理を知っていれば、静止した図でも頭の中で自動的に動きが見えてくる。
木村浩が来た時、白川華怜は英単語を暗記していた。
「今日も電磁気?」木村浩は一目で彼女が机の上に置いた問題を見つけた。
今日の問題は普通だが、要点を突いていない。
白川華怜は頷いた。彼女は英単語アプリを閉じた。
「うん」木村浩は上着を脇に置き、問題用紙を手に取った。答えは一目で分かったので、めくる必要もなかった。「新しい問題を一つ書いてあげよう」
「はい」白川華怜は返事をした。
木村浩は手を伸ばして、印刷したかのような美しい数字を書き始めた。
白い指で印刷されたかのような電場の図を描いた。
彼は真剣になると、全身から漂う疎遠な雰囲気が薄れていく。白いシャツを着て、襟のボタンは全て固く留められていた。
冷たいほど静かだった。