時戸綾音の首のあたりが真っ赤で、かすかに血痕が見えた。
「どうしたの?」教室の入り口で、奥田幸香が急いで駆けつけた。
奥田幸香の声は優しくも力強かった。
八組の生徒が来た時、十五組の誰かが奥田幸香を呼びに行っていた。
「白川!」山田も反応し、白川華怜の簪を掴んだ。
白川華怜は時戸綾音を数秒じっと見つめた。
殺せない。
奥田幸香が言った、みんな祖国の未来の花だと。
でもこいつは磁束だ。
磁束なら、まあいいか。
白川華怜は数秒考えてから、ゆっくりと簪を引っ込めた。
「ゴホッ、ゴホッ——」
時戸綾音は慌てて立ち上がり、恐怖の眼差しで白川華怜を見つめた。白川華怜の机に触れる前、目の前のこの人が狂人だとは全く思っていなかった!
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中村優香の持ち物が盗まれ、最後に十五組で見つかった。