016唯一無二_2

時戸綾音の首のあたりが真っ赤で、かすかに血痕が見えた。

「どうしたの?」教室の入り口で、奥田幸香が急いで駆けつけた。

奥田幸香の声は優しくも力強かった。

八組の生徒が来た時、十五組の誰かが奥田幸香を呼びに行っていた。

「白川!」山田も反応し、白川華怜の簪を掴んだ。

白川華怜は時戸綾音を数秒じっと見つめた。

殺せない。

奥田幸香が言った、みんな祖国の未来の花だと。

でもこいつは磁束だ。

磁束なら、まあいいか。

白川華怜は数秒考えてから、ゆっくりと簪を引っ込めた。

「ゴホッ、ゴホッ——」

時戸綾音は慌てて立ち上がり、恐怖の眼差しで白川華怜を見つめた。白川華怜の机に触れる前、目の前のこの人が狂人だとは全く思っていなかった!

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中村優香の持ち物が盗まれ、最後に十五組で見つかった。

これは小さな問題ではなかった。

副校長は中村優香の件を聞き、手元の仕事を置いて高三の校舎に来た。

「保護者を呼ぶ必要はありません」中村優香は招待状を手に、安藤智秋の電話を切り、奥田幸香と学校幹部に言った。「直接警察を呼びましょう」

保護者を呼べば、それこそ白川華怜の思う壺じゃないか?

最後には中村家の家庭の問題になるだけでなく、学校中がこの転校生が中村家の人間だと知ることになる。

中村優香はこれが白川華怜の仕業だと確信していた。彼女以外に、こんな敵を千人倒しても自分も八百人傷つくような愚かな真似をする人間がいるとは思えなかった。

保護者を呼んで大騒ぎになれば、最後は世論の圧力で中村家が諦めざるを得なくなると考えているのだろう。

でも中村優香は決して彼女の思い通りにはさせない。

「中村くん」奥田幸香はこれが白川華怜の仕業だとは思っていなかったが、誰がやったにせよ、警察を呼ぶことには賛成できなかった。「これは校内の問題です。警察を呼べば生徒の人生に大きな影響が…」

傍らで、副校長が頻りに頷いていた。

「警察を呼ばないって?軽く済ませるつもりですか」中村優香は職員室の人々を見渡した。「私のこの招待状がどれほど価値があるのか分からないなら、田中駆に聞いてみたらどうです」

彼女の隣で、田中駆は少し考えてから「先生、これは白虎オークションの招待状です。特別なルートで購入できる以外は、まさに価値がつけられないものです」と言った。