「安心して」と8組の担任は視線を戻し、「他の誰にも見せたりしないから」
中村優香は担任が嘘をつかないことを知っていた。
それに中村家があるので、彼はこのような件で彼女の機嫌を損ねることはないだろう。
そう思って担任に別れを告げて立ち去った。母親は高橋博士に10日間指導してもらうために多大な代価を支払ったのだ。これ以上ここで時間を無駄にしたくなかった。
8組の担任は彼女が去るのを見送ってから、白川華怜を探しに行った。
今日も白川華怜は課題をやっていなかった。担任はもう慣れていて、ただ彼女の机を軽く叩いて、付いてくるように促した。
白川華怜は上着を手に取り、それを羽織りながらゆっくりと彼の後について行った。
彼女は背筋をピンと伸ばし、黒い瞳には8組の担任の姿が映り、先生に対する敬意を込めた口調で「先生」と呼びかけた。