八時。
講堂では他の生徒たちがぐずぐずと荷物をまとめ始め、憂鬱そうな表情で退室していく。明らかに、今日残された問題は難しすぎて、三十分では最初の小問の図を描くことさえできなかったようだ。
畑野景明は時間になるとすぐに荷物をまとめ、振り返って白川華怜を見た。
白川華怜は木村浩のノートから分散曲線を見つけ、最小偏向角を理解していた。
ゆっくりとペンのキャップ、本、ノートを一つずつ整理していく。
畑野景明は顔を伏せ、蒼白い指が少し動き、彼女の荷物をすぐにでも整理してあげたい衝動に駆られているようだった。
二人が前後して出て行くと、空沢康利もその問題から顔を上げた。彼は散らかった荷物を急いでまとめながら、少し声を高めて言った。「二人とも先に行って、すぐ追いつくから。」
隣では、岩田良絵もその問題を理解できていなかった。
彼女は額に手を当てて立ち上がり、荷物をまとめて寮に戻ろうとしたとき、空沢康利の様子を見た。
彼女は眉を上げ、笑いそうになって言った。「ねぇ、空沢、まさか彼女が出した問題を本当に解いてるの?」
補習クラスの問題のレベルは高すぎて、彼らにはとても理解できないのに。
白川華怜が出した問題を解く時間なんてあるはずがない、それなら家で過去十年分の模擬問題を解いた方がましだ。
空沢康利は口を開きかけ、「実は問題の価値は確かにあるんだ」と言った。
「もういいわ」岩田良絵はカバンを背負い、首を振って言った。「やりたければやればいいけど、忠告しなかったとは言わせないわよ。これは時間の無駄遣い。補習クラスでの成績は平常点に含まれるのよ。」
誰もがこの補習クラスが何のためにあるのか知っている。
残り少ない日々を補習クラスで大切に過ごすことこそが最も重要なのだ。
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空沢康利は白川華怜と畑野景明に追いついた。
木村翼はいつものように喫茶店の一番奥の角に座って白川華怜を待っており、相変わらずルービックキューブで遊んでいた。
空沢康利が木村翼の扱うルービックキューブを見て驚いただけでなく、畑野景明も木村翼を見つめた。
木村翼は人混みが嫌いで、見知らぬ人も苦手だった。白川華怜は二人に木村翼を紹介しなかった。
座ってから彼女は何も言わず、バッグから答案を取り出して二人に渡した。
前回木村浩が残した問題の解答だった。