白川華怜は真剣に勉強していて、何かを失うことなど気にしていなかった。
しかし彼らは、空沢康利が何気なく開いていた本を目にしてしまった。
昨夜は白川華怜が問題を解説し、空沢康利は分からないところを彼女に尋ねた。この問題はすぐに理解でき、江渡大学の物理の本を読む時間があった。その本の半分は光学、電磁気学、運動学の定理の総合的な解析だった。
残りの半分は実験室での実験原理と成果だった。
空沢康利は畑野景明ほど余裕がなさそうで、数ページめくった後で畑野景明に返し、眉をひそめて言った。「今は読まない。後でお前のノートを見せてもらうよ。」
畑野景明は本を受け取った。
中村優香のグループは、二人が気軽に本をやり取りするのを目の当たりにして、羨ましくないはずがなかった。
「あの二人、こんな貴重な本を軽々しく扱うなんて」グループのメンバーは、もはや白川華怜が何を逃したかについて語ることもなく、複雑な思いを抱えながら言った。「もし私のものだったら、毎日大切に読むのに。」