033 弱気な孫娘と冷気漂う木村坊ちゃま

畑野景明も荷物を片付け終わり、空沢康利の叫び声を聞いていた。

振り返ると、案の定、白川華怜の白い顔に冷たい表情が浮かび、危険な目つきで細めた瞳は、言葉を発しなくても畑野景明に寒気を感じさせた。

普段の怠惰な様子は消え去っていた。

畑野景明は空沢康利のカバンの紐を掴み、額の黒髪から覗く陰鬱な目に光を宿らせながら、冷静な口調で言った。「枠を一つやるから、何を騒いでるんだ。先に出ろ。」

とても厳しく、声も大きかった。

空沢康利は「ああ」と声を潜めた。

白川華怜は細長い指でバッグを持ち直し、やっと視線を外して、少し投げやりな態度で出口へ向かった。

二人は後を追った。

階段教室の全員が三人の去り際を見送り、姿が見えなくなってから、お互いの顔を見合わせた。

「今、空沢君は何て言ったんだ?」

誰かが不思議そうに口を開いた。

「たしか...たしか、白川さんが枠を譲るって...」

中村家でも見識の広い田中駆でさえ、この時ばかりは驚きを抑えられなかった。

陽城市の全員、いや四大都市の人々が江渡大学を目指して頑張っているのに、北区第一中学校でさえたった十個の枠しかなく、それぞれの枠は江渡大学が厳重に管理している。

このアプリの枠は競売市場にも出回らず、値段がつけられないほど貴重だった。

中村家も田中家も宝物のように扱っているのに、他の人はなおさらだ。

白川華怜は本当に空沢康利にこの枠を譲るつもりなのか?

「まあ、理解できなくもないけど」階段教室で誰かが突然口を開いた。「畑野君と空沢君がこんな高得点を取れたのは、白川さんが答えを全部共有したからじゃないかな。だって畑野君が一位だし。」

畑野景明はいつも田中駆と学年一位二位を争っていたが、田中駆は今回、江渡大学の博士の助けを借りても畑野景明より点数が低かった。これは背後に実力者がいることを示唆している。

この変数を引き起こしたのは誰か...

白川華怜以外には考えられなかった。

「三人は競争関係じゃなかったの?」

以前は中村優香の二人の組員を羨ましがっていた。

でも今となっては空沢康利と畑野景明に比べれば、その二人には羨むところなんて何もないように思えた。