木村翼は白いシャツと黒のサロペットを着て、一生懸命木村浩の後を追いかけていた。
大人と子供の組み合わせは、道行く人々の視線を集めていた。
講堂の入り口で、学生会のメンバーがチケットをチェックしていた。宮山小町に挨拶しようとしたが、前を歩く人を見て、すぐに声を潜めた。
講堂の中に入ると、宮山小町は畑野景明と一緒に入る勇気が出なかった。
畑野景明が木村浩と二人を中に連れて行くのを見届けてから、やっと緊張が解けた。
「あの方は誰なんだろう?」学生会のメンバーがようやく話し出した。「学長が招いた要人に違いない」と確信めいた様子で。
学長と田中駆たちはなぜ来ていないのだろう。
宮山小町は入り口で白川華怜を待っていた。
時間は短かった。
学校記念式典は8時開始、7時40分に白川華怜は安藤宗次を伴って到着した。
彼女が視界に入った瞬間、すべての人の視線を釘付けにした。
白川華怜は今日、クリーム色の対襟上着を着ていた。衣襟には緑の蔓が刺繍され、スカートは薄緑とクリーム色のグラデーションで、裾には生き生きとした色とりどりのヒナゲシの花束が刺繍されていた。
安藤宗次は彼女のパフォーマンスのために、特別にシルクの薄いガーゼで6メートルの裾を付け加え、仙女のように美しかった。
髪は相変わらずゆるく結い上げられ、素朴な木の簪が差してあった。
余計な髪飾りはなかった。
朝日を背に一歩一歩歩いてくる姿、裾に咲くヒナゲシの花びらを揺らしながら、まるで山野の骸骨の中から血を踏みしめながらゆっくりと歩み出てきた優雅な白虎のようだった。
この世のどんな色彩も、彼女の持つ万千の風情には及ばなかった。
通りかかった人々のほとんどが足を止めた。
宮山小町は突然「世の桃李の花に惹かれず」という言葉を思い出した。
「宮山小町?」白川華怜はゆっくりとスマートフォンを操作しながら、宮山小町が我に返れないのを見て、眉を上げた。
「あっ」宮山小町の顔が一瞬で赤くなり、小声で安藤宗次に挨拶した。「おじいさま、こんにちは。宮山小町と申します。」
そう言いながら、彼女は白川華怜のおじいさまの方を見た。
おじいさまは黒い長衣を着て、厳格な表情で、手に煙管を持っていたが、その煙草入れには煙草は入っていなかった。
宮山小町は白川華怜と安藤宗次を中に案内した。