これは白衣行。
ドラムセットも、ピアノも、ギターも必要ない。
お箏一台だけで、千軍万馬を演出できる。
白川華怜が舞台を降りた後も、会場は1分近く静まり返っていた。
そして、雷のような拍手が轟き出した。
田中局長もはっと我に返った。
彼は一言も発せず、すぐに楽屋へと追いかけていった。
傍らで、校長もようやく我に返り、周りの人に尋ねながら追いかけた。「白川さんはそれほど上手くないって言ってたじゃないか?」
これがそれほど上手くないだって?!
先ほど楽屋で激怒していた学校幹部は「……」
二人の高校三年生の司会者もついに感動の余韻から我に返り、後ろから出てきて、笑顔を浮かべながら司会を続けた。「では次に、最後の出演者をお迎えします……」
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一方、木村浩が出てくると、大門の左側にぼんやりと立っている白川華怜の姿が目に入った。