これは白衣行。
ドラムセットも、ピアノも、ギターも必要ない。
お箏一台だけで、千軍万馬を演出できる。
白川華怜が舞台を降りた後も、会場は1分近く静まり返っていた。
そして、雷のような拍手が轟き出した。
田中局長もはっと我に返った。
彼は一言も発せず、すぐに楽屋へと追いかけていった。
傍らで、校長もようやく我に返り、周りの人に尋ねながら追いかけた。「白川さんはそれほど上手くないって言ってたじゃないか?」
これがそれほど上手くないだって?!
先ほど楽屋で激怒していた学校幹部は「……」
二人の高校三年生の司会者もついに感動の余韻から我に返り、後ろから出てきて、笑顔を浮かべながら司会を続けた。「では次に、最後の出演者をお迎えします……」
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一方、木村浩が出てくると、大門の左側にぼんやりと立っている白川華怜の姿が目に入った。
彼女は宮山小町を待っており、静かに前方を見つめていた。
髪に一本の木簪を差し、逆光の中で風に向かって立っていた。
衣装が微風に揺られていた。
まるで次の瞬間、風と共に遠くへ消えてしまいそうだった。
半分黄ばんだ葉が、そっと彼女の肩に落ちた。
木村浩は手を伸ばし、その葉を優しく取り除いた。指先には黒いマスクが引っかかったまま、彼は目を伏せ、顔全体が影に隠れた状態で、静かな声で言った。「何を見ているんだ?」
彼は彼女の視線の先を追ったが、前方は校舎に遮られて何も見えなかった。
声を聞いて、白川華怜は少し首を傾げ、答えた。「反省してるの。」
反省?
木村浩は優雅に立ったまま、薄い瞳を少し細めた。
「どうしてここに?」白川華怜は突然思い出したように聞いた。「木村翼さんが忙しいって言ってたのに。」
この話題に触れ、木村坊ちゃまは珍しく沈黙した。
今日は休日ではなく、研究室には新しい機器が待っていて、すでに午前中を丸々休んでいた。
しかし、誰も木村坊ちゃまにこのことを尋ねる勇気はなかった。
白川華怜が初めての質問者だった。
田中局長は朝から木村浩の顔すら見られないほどで、まして大胆に質問など、後で格闘場に送り込まれて泣きを見るのが関の山だった。
もし白川華怜のこの大胆さを見たら、きっと彼女を見直すことだろう。
木村坊ちゃまが沈黙している間。
後ろから田中局長も追いかけてきた。