039白衣行（2）

静かな舞台裏では誰も彼女の思考についていけず、学校の幹部たちも少し呆然としていた。

男子生徒は白川華怜に襟を掴まれ、近距離でその顔を見るとかなりの衝撃があり、一瞬反応できなかった。

白川華怜は冷静に彼を見つめ、繰り返した。「お、箏、は、あ、る？」

「あります！」彼はすぐに我に返った。

学校の多くの備品は江渡からの寄付で、特にお箏は学校によく寄贈されていた。

音楽室には異なる種類のお箏が七、八台もあった。

「ふん」白川華怜は頷き、手を離した。

携帯を隣にいる宮山小町に渡し、さらにゆっくりと両手の装飾品を外して彼女に渡し、丁寧に言った。「お箏を持ってきてもらえますか」

男子生徒は一瞬戸惑った後、急いで隣の部屋へお箏を取りに行った。

舞台上の演技はすでに終盤に差し掛かっていた。

白川華怜は袖を整え、学校幹部を見つめた。冷たい瞳には何の感情も宿っていなかったが、その淡々とした口調は聞く者の背筋を凍らせた。「演目の変更は可能ですよね？」

元々威勢の良かった学校幹部は思わず頷いた。

白川華怜は視線を戻し、「では変更します。私がお箏を弾きます」

お箏を取りに行った男子生徒がちょうどお箏を抱えて戻ってきた。

白川華怜はお箏を受け取り、茶色のお箏をしばらく見つめた後、やっと弦を弾いてみた。

少し耳障りな音が出た。最高級のお箏ではなく、音色もあまり良くなかった。

彼女はゆっくりと丁寧に調弦を始めた。

まあ、使えないことはない。

舞台裏のスタッフは白川華怜の意図を理解し、現場には集音マイクもお箏も揃っており、お箏の演奏には十分な環境が整っていた。

彼らが琴椅子と支架を設置すると、白川華怜はお箏を抱えて幕を開けて舞台に上がった。

白川華怜に頭を下げさせようと待っていた中村優香はその場に立ち尽くし、眉をひそめながら白川華怜が舞台裏から消えていくのを見つめていた。

「宮山さん、クラスメイトはお箏も弾けるんですか？」誰かが気づいて、小声で宮山小町に尋ねた。

白川華怜の先ほどの調弦は様になっていて、素人には見えなかった。

宮山小町は今や冷や汗を流し、力なく「うん」とだけ答えた。

ただその返事には自信がなく、上の空のようだった。

その場にいた大半の人々は彼女の様子を見て、お互いに目配せし、白川華怜はおそらくお箏が上手くないのだろうと察した。