明石真治はポケットに片手を入れてクールに二歩離れた場所に立ち、白菜の絵が描かれた漫画のバッグを手に持っていた。
その言葉を聞いても、頭を上げずに答えた。「おかしくないよ。北実さんは以前、おばあさんの道路横断を手伝ったことがあるし」
「本当に手伝ったの?」田中局長は驚いて言った。「あんなに冷たい人が、おばあさんの道路横断を手伝うなんて?冗談だと思ってたよ」
田中局長は彼らの誰一人とも冗談を言う勇気がなかった。
木村錦は笑顔の中に刃を隠していた。
渡辺颯は優しく一刀両断。
田中北実はもっと凄かった、一刀一刀が急所を突く。
明石真治だけがまだ付き合いやすかった、単純だから。
明石真治は彼を一瞥して言った。「軍事学校の掲示板を見れば、彼女のその投稿が見つかるよ」
田中局長は田中北実に聞く勇気がなかった。
投稿があると聞いて、心が動いた。
二人が話している時、白川華怜が車から降りてきて、田中局長は慌ててタバコを消した。
明石真治は急いで姿勢を正した。彼は田中局長と用事があり、木村翼を白川華怜に預けなければならなかった。「お願いします」
彼は恭しく木村翼のバッグを白川華怜に渡した。
二人とも白川華怜に対して異常なほど丁重だった。
明石真治は図書館の入り口に立っていた。
白川華怜と木村翼が中に入るのを見届けてから、二人は車に乗った。
白川華怜は一目で木村翼を抑制できる人物だと分かった。彼女が木村翼の側にいて、影で木村翼を守る人もいるので、木村浩も安心して明石真治を異動させることができた。
「白川さんがいてよかった」田中局長はバックミラーに映る図書館を見ながら感慨深げに言った。
図書館にて。
白川華怜はゆっくりとチケットを一枚取り出し、木村翼の前で振った。「明後日、行く?」
木村翼は黙ったまま手を伸ばして取ろうとした。
白川華怜は眉を上げ、チケットを高く掲げて軽くはじいた。「話さないということは、行きたくないってことね」
白川華怜の手首にも届かない木村翼は「……」
本当にチケットをしまい、生物のノートを落ち着いて取り出す様子を見て、木村翼は「……」
「行く」
彼は渋々口を開いた。