白川華怜はゆっくりと筆を置き、片手で木村翼の机に寄りかかりながら、しばらく絵を眺めていた。
そして評価を下した。「木村琴理、この腕前で先生に殺されなかったの?」
まだ7歳だが、すでに賞を取ったことのある木村翼は「……?」
今日は自分に会いに来たんじゃないの?
白川華怜はそう言って、ふと木村浩のノートに描かれた猫のことを思い出した。
彼女は首を傾げて、「木村先生、あなた……」
木村浩は突然姿勢を正し、携帯の時間を確認すると、表情を変えずに冷静な口調で、クールな様子で言った。「もうすぐ授業だから、学校まで送るよ。」
この時間にバスで学校に行けば、確実に遅刻する。
白川華怜は彼をちらりと見て、断らずに「いいわ」と答えた。
ただし、二人が階段を降りる時、木村浩の後ろをゆっくりと歩いていた白川華怜が再び口を開いた。「木村先生、あなたの描いた猫は、猫に見えない以外は全部いいわ。」
木村浩は鍵を手に取りながら、軽くため息をついた。やっぱり——
あのノートは良くないことになる。
階下で。
田中局長と明石真治は片隅に立ち、木村浩に冷たい視線を向けられ、何も聞かなかったふりをした。
二人が去った後。
命拾いした田中局長はようやく安堵の息をついた。
彼はソファに座り、冷たいお茶を一杯飲み干してから、明石真治に向かって言った。「白川さんは私の恩人だ。彼女なしでは生きていけない。」
明石真治は腕を組んで、冷たく彼を見つめた。
反対しがたい状況だった。
「そういえば」田中局長は何かを思い出したように明石真治を見た。「格闘場に新しい神様が現れたの知ってる?」
黒水通り格闘場、神を生み出す場所。
かつてムエタイのチャンピオン、トンパがここで一戦を経て神となり、世界中で話題となった。
各勢力が注目している。
明石真治は首を振った。
最近は師匠を探していて、この件には関心がなかった。
「この人は本名を使わず、コードネームを使っている」田中局長はソファを指で叩きながら言った。「たった一週間で、格闘場の最下位から十位以内まで這い上がった。」
明石真治は驚いた。
明石家と田中家は武力を重んじ、木村浩の側近は皆並の者ではない。