木村浩は木村翼を一瞥し、「遠山律夫は昼に彼の嫌いな料理ばかり作ったんだ」と言った。
木村翼は極度の偏食家で、普通の人とは全く違う好みを持っていた。
木村家の料理人たちは彼の習慣を知っていて、毎回必ず木村翼が食べられる料理を一、二品は作っていた。
遠山貴雲はそれを知らず、木村翼が何も食べないと知ると、おずおずと偏食の子供は背が伸びないと言い添え、木村翼は一人で今まで拗ねていた。
木村浩は道中ずっと我慢して、彼を叱らなかった。
ただ木村翼が食べない料理のリストを遠山貴雲に渡しただけだった。
白川華怜は頷いた。前回調べたところ、自閉症の子供は変わった性格を持ち、木村翼が食べない料理はほとんど同じタイプのもので、そのタイプの料理に対してトラウマがあるのかもしれない。
だから木村浩でさえ叱るのを我慢したのだ。
三人が図書館に着くと、ちょうど明石真治が木村翼の食事を届けてきた。
彼は静かに木村浩の後ろに立ち、報告した。「書類は書道協会の人に渡しました」
明石真治は書道協会に詳しくなく、渡辺和美のことも知らなかったので、相手を「書道協会」の人と総称した。
木村翼が食事をするため、白川華怜たちは図書館一階のカフェで待つことにした。
木村浩はカフェの椅子に座り、片手を無造作に椅子の背もたれに掛け、眉間に冷淡さを漂わせながら、ただ「うん」と一言。
白川華怜は足を組んで、生物の問題を取り出してゆっくりと解き始めた。
「そうそう」明石真治は木村浩の機嫌が良さそうなのを見て、やっと口を開いた。「書道協会がまた、審査員として可能性があるかどうか聞いてきまして……」
言葉が終わらないうちに、木村浩は明石真治を淡々と見つめた。
冗談を言っているのかという表情だった。
明石真治:「……」
冗談を言ったのは彼ではなく、木原会長だった。
木村浩が視線を外し、隣の白川華怜と話し始めると、明石真治はやっと安堵の息をついた。
スマートフォンを取り出し、グループで木村錦をメンションした。
明石真治:【@木村錦 作品は渡しました。他は木村坊ちゃまが拒否です。】
今回の木村錦の返信は非常に早かった。
木村錦:【???】
木村錦:【まだ生きてるの?】
木村錦は非常に直接的だった:【信じられない】
渡辺颯:【1を押して人間であることを証明して】