今回の書道賞の参加者はそれだけで、渡辺和美も紀伊辰也が自分より上手いことを認めるだけだった。
他の人については……
三位については、彼女は全く考えていなかった。
渡辺泉はバックミラーを見ながら、感嘆して言った。「二位でも凄いわよ。書道賞は今まで何回も開催されてきたけど、女性で一位を取ったのは一人だけよ。」
渡辺和美が二位を取れば、その注目度は紀伊辰也以上になるだろう。
この点について、渡辺泉もよく分かっていた。
ますます同級生を妬んでいた。
助手席では、安藤蘭が携帯を手に持っていた。彼女は会話に加われず、ただ書道賞について検索するだけだった。
「明石坊ちゃま」や紀伊辰也、木原会長については、全く知らなかった。
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土曜日だったので。
白川華怜と安藤宗次は昼食を安藤秀秋の家で食べていた。
「ここは立ち退きになるかもしれない」食卓で、安藤秀秋は眉をひそめながらこの件について話し出した。
水島亜美も特に無口だった。
白川華怜は静かに席に座り、ゆっくりと食事をしながら、彼らの話を聞いていた。
安藤宗次は煙管を手に取り、火をつけて一服吸ってから口を開いた。「役所から通知が来てないなら、まだ分からないよ。焦らないで、午後は釣りに行って気分転換しよう。」
「そうよ」水島亜美は突然笑顔になって白川華怜に箸で料理を取ってあげた。「私たちのような場所なんて、どのデベロッパーが目をつけるっていうの。さあ、食べて、みんな食べて。」
安藤秀秋の眉がやや緩んだ。彼は再び箸を取り、「どこで釣りをするんだ」と聞いた。
「陽城川だよ」安藤宗次は普段から食欲があまりなく、たくさん食べなかった。ただ安藤秀秋に早く食べるよう促した。「田中くんも後で来るから、食べ終わったら先に良い場所を確保しに行こう。」
食事が終わると、安藤宗次は安藤秀秋を連れて釣りに行った。
白川華怜は鞄を持って図書館へ向かった。
ドアを出たところで、携帯が光った。ランスからのWeChatだった。
ランス:【こんにちは】
白川華怜は眉を少し上げて、【はい】と返した。
ランス:【漢方医学って本当に素晴らしいですね】
ランス:【[画像]】
彼は白川華怜に一枚の画像を送ってきた。白川華怜はドアを閉めながら、何気なく開いてみると、それは病状診断書だった。