「いいえ」加藤正則は手を振った。
事務室のドアの方をじっと見つめていた。
彼の隣で、局長が来たばかりで、校長が彼らに見せた白川華怜が以前狼毫の筆で書いた一枚の書を見ていた。
その紙はカメラマンが追加撮影に持って行ったため、校長は写真しか持っていなかった。
「あなたの言う通りだと思います」局長は加藤正則に小声で言った。「私たちには本当に希望があるかもしれません」
二人が話している最中。
ドアが静かにノックされ、加藤正則と局長は即座に顔を上げた。細身の影が見えた。
相手は少し俯いており、長く白い指でドアに触れながら、ドアを開けるしぐさと共にだらしなく入ってきた。冷たい玉のような輝きがゆっくりと差し込んできた。
女子生徒だった。
局長と加藤正則は視線を戻した。
二人とも無意識のうちに、あのような字は男子生徒にしか書けないと思っていた。