057 会長先生、華怜さんが事を起こそうとしている（2/2）

水島亜美は一瞬リラックスし、目配せで白川華怜に合図を送った。この義父はなかなかいい人だと。

しかし、白川華怜は彼女の視線を受け止めなかった。

安藤蘭は渡辺泉の様子を見て、渡辺泉が白川華怜に好印象を持っていることを悟った。白川華怜が悪さをしなければ、あの顔は人を騙すのに十分だった。

彼女は白川華怜を渡辺家に連れて行くことはできないが、できるだけ渡辺泉と接触させようと考えていた。

「おじいさんから聞いているだろう」渡辺泉は少し考えてから言った。「年末に君のお母さんと結婚する」

「うん」白川華怜はこの件に無関心だった。「おめでとう」

安藤蘭の表情が和らいだ。

渡辺泉が驚いて、何か言おうとした時、脇に置いてあった携帯が鳴った。彼は画面を見て、すぐに電話に出た。

「はい」渡辺泉の声は厳かで敬意に満ちていた。相手が並の人物でないことは一目瞭然だった。「...はい、その通りです。陽城市にいます。あるプロジェクトの買収を予定しています」

電話の向こうで何か言われた。

渡辺泉は驚いて、急いで立ち上がり、興奮気味に「なんですって？！...はい、分かりました。必ずしっかりとやらせていただきます！」

相手が電話を切るのを待ってから、自分も電話を切った。

安藤蘭は渡辺泉がこんな態度で誰かと話すのを見たことがなく、驚いて彼を見つめ、少し間を置いて「誰からの電話？」と尋ねた。

「渡辺執事からです」渡辺泉は必死に抑えようとしたが、喜びを隠しきれなかった。安藤蘭に微笑んで「渡辺さんが陽城市に直接何かを取りに来られるそうです。私がここにいることを知って、しっかりもてなすように言われました。蘭、私たちの陽城市行きは正解でしたね」

安藤蘭は、彼の口から出た「渡辺執事」と「渡辺さん」が、彼女の知っている渡辺家の人々とは全く違う人物だということをよく理解していた。

「渡辺さん？」安藤蘭は軽く尋ねるような口調で言った。

「渡辺和美さんのことです」渡辺泉はテーブルの周りの人々に説明し、感慨深げに、珍しく羨ましそうに続けた。「彼女は18歳で既に書道協会に目をつけられ、師匠は書道協会の会長なんです」

渡辺和美の父親は彼の同級生で、幼い頃から一緒に育った。しかし同級生は和美のおかげで出世し、本家で重要な地位を占めるようになった。

一方、彼は依然として現状維持のままだった。