渡辺和美以外に、これほど見事な梁体字を書ける人は他にいないはずだった。
「彼女、普段以上の力を発揮したのかな?」木原会長も驚きを隠せなかった。
木村執事との会話を中断し、審査員の側に歩み寄って作品を見た。
一目見た木原会長も、少し呆然とした。
「これは……」木原会長は渡辺和美のことをよく知っているつもりだった。意境は時として掴みにくいものの、基本的な技術は明らかだった。彼は作品を手に取り、熱心な眼差しで見つめた。「これは和美の字ではない。和美にはこれほどの腕力はないはずだ!」
渡辺和美の作品ではない?
では誰の作品なのか?
どこから現れた伏兵なのか?
七人の審査員は顔を見合わせた。
前の席でずっとパソコンを見ていた木村浩がようやく顔を上げ、長い指で机を軽く叩きながら、断固とした口調で言った。「見せて。」