渡辺和美以外に、これほど見事な梁体字を書ける人は他にいないはずだった。
「彼女、普段以上の力を発揮したのかな?」木原会長も驚きを隠せなかった。
木村執事との会話を中断し、審査員の側に歩み寄って作品を見た。
一目見た木原会長も、少し呆然とした。
「これは……」木原会長は渡辺和美のことをよく知っているつもりだった。意境は時として掴みにくいものの、基本的な技術は明らかだった。彼は作品を手に取り、熱心な眼差しで見つめた。「これは和美の字ではない。和美にはこれほどの腕力はないはずだ!」
渡辺和美の作品ではない?
では誰の作品なのか?
どこから現れた伏兵なのか?
七人の審査員は顔を見合わせた。
前の席でずっとパソコンを見ていた木村浩がようやく顔を上げ、長い指で机を軽く叩きながら、断固とした口調で言った。「見せて。」
木原会長はもう少し見ていたかった。
しかしその声を聞いて、断る勇気はなく、恭しく作品を差し出した。
木村浩は作品を受け取り、目を伏せた。長い睫毛が淡い瞳を覆い、静かに作品を見つめた。
彼の最も人を威圧するところは、あの何とも言えない圧迫感だった。何もせずにただそこに座っているだけで、醸し出す雰囲気だけで人々を寄せ付けない。
今、目を伏せて一言も発しない様子に、木原会長も耐えられない。
審査室は針が落ちても聞こえるほど静かだった。
彼の傍らにいる木村執事だけが、わずかにその雰囲気に耐えられるようだった。
木村浩は長い間見続けた。木原会長はついに我慢できず、助けを求めるように木村執事を見た。
木村執事も不思議に思い、少し身を屈めて、声を低くして言った。「少爺、飛行機の出発時間が迫っております……」
「ああ」木村浩は作品を木原会長に返し、片手でパソコンを閉じた。二歩歩いたところで、何か思い出したように、淡々と木原会長を見て言った。「資金を倍にして、今回の一位作品を木村家に送れ。」
「え?」木原会長は少し戸惑った。
木村浩は一瞥を投げかけた。
特に表情は変えなかったが、その鋭い顔は刀の刃のように冷たかった。
木原会長は思わず身震いし、急いで答えた。「はい、私が直接お持ちいたします!」
彼らがようやく去ると。
審査室は一瞬にして氷雪が溶けたように、春が訪れたかのようだった。