062華怜さんの奇策、優しい木村坊ちゃま_3

彼は渡辺和美に説明する時間がなかった。

直接車を運転して書道協会に向かった。

書道協会の審査室。

会議テーブルの中央に、真っ白なシャツを着た男が座っていた。彼は目を伏せ、白い指でパソコンの画面を叩いていた。細かい黒髪が眉骨まで垂れ、目尻と眉には冷たい雰囲気が漂っていた。

言葉を発しなくても、彼の全身から漂う気品と冷たさが感じられた。

彼が指を動かすたびに、審査室全体に冷たい風が吹き抜けるようだった。

彼の傍らに立っている儒雅な老人が笑みを浮かべて言った。「皆様、緊張なさらずに。坊ちゃまはただ見学にいらっしゃっただけですから。先生方はしっかり採点なさってください。リラックスして」

七人の審査員は震えながら作品を手に持ち、その言葉を聞いて、泣きそうになった。

そう言われても。