この結果が出る前まで、自分が選ばれるかどうかは疑問に思っても、今年の種選手については誰も疑いを持っていなかった。
しかし、こんなにも不思議なことが起きた。
一位は紀伊辰也でもなく、渡辺和美でもなかった。
さらに、この二人は一等賞にも選ばれなかった。
掲示板の前に押し寄せた人々は一瞬呆然とした後、油鍋に水が落ちたかのような騒ぎになった。
「この白川博って誰?聞いたことある人いる?」
「突然の一位?」
「一体何を書いたんだ!」
「今年の書道賞は本当にすごいな、書道史に残るんじゃないか?」
「三日後が待ち遠しい!」
「……」
この時点で、誰もこの一位の実力を疑う者はいなかった。
なにしろ二等賞には、次期会長候補の紀伊辰也と、現会長の弟子である渡辺和美がいるのだから。
書道協会の場で不正をする者などいるはずがない。
今年はこの二人の輝きの中で、さらにこの二人を押しのけて、圧倒的な一位を取った。
この実力に対して、他の人々は何も言えなかった。
富田副会長は呆然としすぎて、また人々に押し出されてしまった。
「副会長」北区書道協会の人々が急いで囲んできた。「どうですか?今年の結果がおかしいって聞きましたが?」
加藤京弥も自分が三等賞を取れたかどうか知りたくて仕方がなかった。「副会長、結果をご覧になりましたか?」
「今年の結果は大騒ぎになりそうだ」南区管理人も押し出されてきて、藤野弘が三等賞だと気づいた。「この一位は一体誰なんだ?富田さん、聞いたことありますか?」
「あ……」富田副会長は目を瞬かせた後、もう一度受付表を見て、ぼんやりと言った。「これは……その、谷部弘樹と加藤京弥は入選、藤野弘は三等賞だ。」
この知らせを聞いて、加藤京弥と藤野弘は顔を見合わせ、頭を垂れた。
漆黒の瞳から光が消えた。
「落ち込むなよ」南区管理人は首を振った。彼の生徒たちは入選しかできなかった。「今回の結果は異常だ。変態……じゃなかった、異常な事態が起きた。藤野君だけじゃない、紀伊辰也も渡辺和美も二等賞だぞ。」
藤野弘の失望していた心が一瞬で生き返った。「二人とも二等賞なの?!」
彼は全員の心の声を代弁した。