064書道史、彼女を消して

この結果が出る前まで、自分が選ばれるかどうかは疑問に思っても、今年の種選手については誰も疑いを持っていなかった。

しかし、こんなにも不思議なことが起きた。

一位は紀伊辰也でもなく、渡辺和美でもなかった。

さらに、この二人は一等賞にも選ばれなかった。

掲示板の前に押し寄せた人々は一瞬呆然とした後、油鍋に水が落ちたかのような騒ぎになった。

「この白川博って誰?聞いたことある人いる?」

「突然の一位?」

「一体何を書いたんだ!」

「今年の書道賞は本当にすごいな、書道史に残るんじゃないか?」

「三日後が待ち遠しい!」

「……」

この時点で、誰もこの一位の実力を疑う者はいなかった。

なにしろ二等賞には、次期会長候補の紀伊辰也と、現会長の弟子である渡辺和美がいるのだから。

書道協会の場で不正をする者などいるはずがない。