事務局長と谷部部長は木村浩のことを知らなかったが、知らなくても、ドアを開けた瞬間から強烈な威圧感を感じた。
その圧迫感で頭も上げられないほどだった。
木村浩の後ろについていた明石真治は、生まれてこのかた。
以前、木村浩に大学に行かない方がいいと言われた時でさえ、こんなに強い威圧感を感じたことはなかった。
陽城市は中村家のものだと?
明石真治は彼らがどうしてそんなことが言えるのか理解できなかった。
彼は手を伸ばし、事務局長と谷部部長を一人ずつ掴んで放り出した。「先にお入りください。私が処理します。」
木村浩にこの件を処理させたら、中村家は皮を一枚剥がされることになるだろう。
木村浩が入った後。
明石真治は頭を下げ、事務局長と谷部部長を一瞥した。「田中長邦の部下か?」
木村浩が去った後、事務局長二人はようやく息をつけたが、しかし事務局長がまだ息を整える間もなく、明石真治の次の一言で肝が冷えた。
中村修の右腕として、事務局長は当然田中局長の資料を受け取っていた。
中村家の連中が毎回「田中さん」と呼んでいたとしても、田中さんの本名を知らないわけではなかった。
事務局長の反応を見て、明石真治は間違いないと確信し、事務局長に構う気もなくなった。「田中長邦から連絡させます。」
そう言って、彼は再び中に入り、二人を外に閉め出した。
谷部部長は最近昇進したばかりで、当然田中長邦の名前など聞いたこともなく、木村浩と明石真治が部屋に入ってから、やっと事務局長の方を見た。「あの二人は誰なんだ?田中長邦って誰だ?」
先入観から、安藤秀秋の家は彼に白川華怜を軽視させていた。
彼が言い終わった時、事務局長の顔が真っ青になっているのに気づいた。
「田中...田中さん...」事務局長は指を震わせながら、突然今日の威張った態度が場違いだったことに気づいた。「急いで先生のところへ戻りましょう!」
あの二人の威圧感から、事務局長は明石真治の口から出た田中長邦が同姓同名である可能性を全く疑わなかった。
安藤家のような連中なら、今日の件は簡単に解決できると思っていたのに、どうして田中さんまで関係してくるんだ?
彼はほとんど飛ぶように階段を下りていった。
後ろで、谷部部長はようやく状況が少しおかしいことに気づいた。