空沢康利はこんな愚痴を吐くことはできなかった。
木村坊ちゃまは片手で持ったミルクティーにストローを適当に差し込み、表情は極めて平静だった。ただ、ミルクティーを持つ手が白く冷たく、アイスミルクティーよりも冷たそうに見えた。
白川華怜は一口飲んでから、しばらく横で彼を観察し、畑野景明が書いていたテスト用紙を引き抜いて木村浩の前に置いた。「木村先生、この問題を見ていただけますか?」
木村浩は表情を冷淡な様子に戻し、「ああ」と答えた。
彼は問題を見下ろした。
そして白川華怜に説明を始めた。
向かい側の畑野景明はペンを持ったままの姿勢で、「……?」
自分はここにいない方がいいのだろうか?
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白川華怜は問題を終えると、夕方に水島亜美を見舞いに行った。
毎回、安藤蘭と渡辺泉を避けるようにしていた。
彼女はそのことを隠そうとはせず、だから安藤宗次と安藤秀秋もそれを知らないふりをし、この二人と会いそうな時は、前もって白川華怜に伝えていた。
しかし今日は、安藤蘭と渡辺泉が朝に一度来ていて、白川華怜は予想していなかったが、夜に行った時にちょうど病院の入り口で出てきた彼らと出くわしてしまった。
前回の件があったため、安藤蘭は白川華怜に会うと複雑な眼差しを向けた。
渡辺泉は逆に気さくに白川華怜に挨拶をした。
白川華怜は唇を引き攣らせ、極めて表面的な対応をした。
伊藤満はずっと病院の入り口で白川華怜を待っていた。彼は渡辺泉なんて気にも留めず、白川華怜を見るなり目を輝かせた。「姉さん、頼まれた物ができましたよ!」
彼は布袋を白川華怜に渡した。
白川華怜が開いてみると、中には彼女が頼んだ梅花針が整然と並んでいた。
安藤蘭は伊藤満の金髪を見て、思わず眉をひそめた。何か言いたそうにし、今日の松木家の件がどう解決したのか聞きたそうだったが、今回は言い出す勇気がなかった。
渡辺泉は彼女を一瞥してから前に出て、驚いて尋ねた。「銀針?これは何に使うの?」
「ランス先生が私たちの鍼灸を試してみたいそうです」白川華怜は銀針を片付けながら、そっけなく答えた。
彼女はこの二人とは多くを語らず、病棟の方へ向かった。