085手が出せない(2)_3

陽城ホテル1205号室。

ノックの音。

部屋の中で、白鳥春姫はバスルームでシャワーを浴びていた。順子さんは彼女の潔癖症を知っていて、シャワーに時間がかかることを分かっていた。

ドアを開けると、見知らぬ背の高いイケメンの男子生徒が立っていた。「あ、あなたは...山田くん?」

山田清貴は陽城第一高校の男子の顔とも言える存在だった。

順子さんは山田清貴だと分かり、バスルームに向かって声をかけた。「春姫、山田くんが来てるわよ」

バスルーム。

白鳥春姫の手が震え、カミソリが手首から滑り落ちた。慌てて湯船から立ち上がり、体を拭いて服を着て出て行った。

彼女は背が高く脚が長く、ホテルのスリッパを履いて、髪を拭きながら出てきた。「なんで家で勉強せずにここに来たの?」

「今、花が届いたんだ」山田清貴はニヤッと笑い、背中から大きな花束のアイリスを取り出して白鳥春姫に渡した。「届けに来たんだ」

白鳥春姫は髪を拭く動作を止め、雪のように白く、水滴の付いたアイリスの花束を見つめた。

しばらく躊躇してから、やっと手を伸ばして受け取った。

「ありがとう」

山田清貴は手を伸ばし、初めて白鳥春姫を優しく抱きしめた。彼は低い声で言った。「白鳥さん、大丈夫だから」

そう言うと、帽子を押さえた。

そして振り返って出て行った。

ドアが閉まった。

順子さんはようやく呆然と花を抱える白鳥春姫を振り返り、疑わしげに言った。「あなたの潔癖症って嘘だったの?」

白鳥春姫は彼女を無視し、花を置くと、再びバスルームに戻り、カミソリをゴミ箱に捨てた。

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翌日。

白川華怜が学校に着くと、宮山小町はいつものように毎日の質問をした。

否定的な答えを得た後、藤野院長に報告した。

「このお人よしはまた今日も遅刻するみたいね」授業開始が近づいても山田清貴は来ておらず、宮山小町は彼の空の机を見ながら眉を上げた。

彼の遅刻は15組では日常茶飯事だった。

白川華怜は本を開きながら、それにも驚かなかった。

しかし今日は誰もの予想に反して、山田清貴は一日中来なかった。

奥田幸香でさえ具体的な状況を知らなかった。

放課後。

白川華怜と宮山小町たちは、山田のお母さんの花屋に様子を見に行くことにした。