087江渡大学、華怜が動く（2更）

白川華怜は渡辺泉を見つめていた。彼女の眼差しは冷淡で、表情も乏しかった。

しかし渡辺泉は何故か緊張していた。

「彼は慈善家で、草刈新堂という人です」渡辺泉は彼女に説明した。「今回のビジネスパートナーですが、何故か加藤家に襲われて、今ICUにいるんです。」

「草刈新堂？」白川華怜は食堂に掲げられていた横断幕を思い出した。

彼のことは少し印象に残っていた。

その時、森園雄も言っていた。確かにこの人は慈善家だと。

彼女は記憶力が良く、この草刈新堂が慈善家というだけでなく、森園雄の言う「タイムメディア」の株主でもあることを覚えていた。

白鳥春姫の上司でもある。

「よく知っているの？」彼女は尋ねた。

渡辺泉は首を振った。「そうでもない、ビジネスパートナーというだけです。」

「分かった、ランス先生に聞いてみる」白川華怜は視線を戻し、少し考えて、「白鳥春姫の最近の行方と情報を調べてくれない？できれば電話番号も教えて。」

「白鳥春姫？」渡辺泉はこの名前に聞き覚えがあった。

すぐに思い出した。陽城市のPR活動のために新しく雇ったタレントだ。「知っています。すぐに調べます。」

渡辺泉がタレントを雇う時は適当に選んでいた。

この公益活動が渡辺家主導だということは誰も知らなかった。

このような公益的な活動は、タレントがめったに引き受けない。

白鳥春姫は陽城市出身で、最初にこの公益活動を引き受けた。渡辺泉は彼女に好印象を持っていた。後で助手から、この白鳥春姫が「潔癖症」でネット上で炎上していると聞いても、彼女を降板させなかった。

これは白川華怜が初めて彼に頼み事をしたことだった。

渡辺泉は非常に真剣に受け止めた。

余計な言葉は言わず、車に戻るとすぐに助手に白鳥春姫の近況調査を始めさせた。

白川華怜は気軽に尋ねていたが、渡辺泉にはそれが分かっていた。彼はさらに言った。「そうそう、調べる時は彼女に丁寧に接してね。」

「彼女に丁寧に？」助手は少し理解できなかった。

タイムエンターテインメントの社長でさえ渡辺泉には丁重に接するのに、タイムメディアの三流タレントにまで丁寧に？

助手は身分をはっきりさせないと、どの程度丁寧にすべきか分からなかった。