山田のお母さんは離れたくなかった。
でも白川華怜の言う通り、息子を信じるべきだった。
涙を拭った。
白鳥春姫の手を握り、再び顔を上げた時、目は決意に満ちていた。「春姫ちゃん、行きましょう」
「ピン——」
エレベーターがこの階に止まった。
扉がゆっくりと開いた。
山田のお母さんは白鳥春姫を連れて先に入り、白川華怜は最後に続いた。エレベーターの入り口で振り返り、ICUの表示を見つめた——
SICU。
外科集中治療室。
前回水島亜美が入院した同じ集中治療室だった。
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草刈会長はエレベーターの扉が閉まるのを見て、横を向いた。「裁判所と鈴村景塚の方はどうだ?」
「鈴村弁護士はもう陽城市に向かう準備をしています。裁判所は審理中で、召喚状は明日には彼らの手元に届くはずです」秘書は全て手配済みだった。「あの山田も賢いですね。すぐに自首しましたが、この種の故意傷害事件は最低でも七年以上の懲役刑です」
警察署で済むと思っていたのだろう。
しかし草刈会長も甘くはない。
万が一、山田が鈴村景塚を雇えたとしても、最低でも七年の懲役は免れない。
「ピッ——」
ICUの機器が突然狂ったように点滅し始めた。
当直医と看護師が急いで駆けつけた。「すぐに救急室へ!」
「渡辺社長の方はどうだ?!」草刈会長の表情が変わった。山田の件は心配していなかったが、今は草刈新堂の命が心配だった!
秘書はすぐに渡辺泉に電話をかけた。「少々お待ちください!」
渡辺泉の方では。
秘書が白鳥春姫の件を調べ、噂も耳にしていた。頭を抱えながら、白鳥春姫と山田の件を調べ上げると、額に冷や汗が浮かんだ。
渡辺泉がオンライン会議中だったにも関わらず、ノックをした。「社長、緊急の件で、すぐにお話しする必要があります」
渡辺泉は手を上げ、会議を一時停止し、マイクをミュートにした。
秘書に話すよう促した。
「草刈社長の件は、白鳥春姫と白川さんと深い関係があります。白鳥春姫のマネージャーが草刈会長の連絡先を求めてきました。芸能界で白鳥春姫が干されているようです。詳しい状況はまだ分かりませんが」秘書は事態の深刻さを理解していた。「草刈社長が殴られた件は単純ではありません。白川さんが必ず調査するでしょう。慎重に対処された方がいいと思います」