090法外の狂徒・木村坊ちゃま

遠山貴雲は一目見ただけで、これが極めて普通の刑事事件だと分かった。

田中局長がこんなに神妙な様子だったので、何か大事件が起きたのか、あるいは重要な案件なのかと思っていたのに。

こんなものか……

自分でなくても、木村坊ちゃまの法律事務所の誰かを適当に選んでも対応できる。

因果関係が明確なこの種の事件は、結果にそれほど差は出ない。

「こんな事件で私に依頼するなんて、あの法律事務所の連中は早めに転職したほうが……」遠山貴雲は事件ファイルを机の上に投げ出し、冷笑した。

田中局長は遠山貴雲の大言壮語を聞いて、額の血管が何度か脈打った。彼は咳払いをし、左手で口を隠しながら、声を潜めて言った。「遠山さん、この人は白川さんの友人なんです。」

「や、やられた」遠山貴雲は即座に姿勢を正し、手を伸ばしてファイルを再び手に取った。「白川さん、実を申しますと、私の最も得意とする分野は刑事訴訟なんです。」

厳かで神聖な表情で。

もし頭にコック帽を被っていなければ。

白川華怜は向かい側に座り、椅子の背もたれに少しもたれかかり、やや怠惰な姿勢で、細長い白い指でスマートフォンの背面を時折トントンと叩きながら、二人の会話を静かに聞いていた。

「はい、よろしくお願いします」彼女は指を止めて、礼を言った。

遠山貴雲は手を振り、直接山田の書類に目を通し始めた。

五分後、彼は眉間にしわを寄せ、顔を上げて尋ねた。「どのような判決なら受け入れられますか?」

白川華怜は何も言わず、ただ少し首を傾げて白鳥春姫の方を見た。

白鳥春姫は初日からこれに関連する弁護士に相談していた。渡辺泉が紹介した二人の紅丸法律事務所の弁護士にも相談していた。

この事件は人証も物証も監視カメラの映像もあり、悪質な故意殺人で、類似の事件なら通常十年以上の有期懲役だが、相手の弁護士が鈴村景塚なので……

山田の最良の判決でも十五年の有期懲役だろう。

実際、彼らは皆予想していた。草刈家のやり方からすれば、無期懲役か……死刑の可能性が極めて高い。

白鳥春姫は遠山貴雲を見つめた。

彼女も順子さんも遠山貴雲の名前を聞いたことがなかった。特に遠山貴雲は頭にきちんとコック帽を被っていた。

田中局長が口を開くまで、白鳥春姫も順子さんも彼を弁護士だとは思っていなかった。