090法外の狂徒・木村坊ちゃま

遠山貴雲は一目見ただけで、これが極めて普通の刑事事件だと分かった。

田中局長がこんなに神妙な様子だったので、何か大事件が起きたのか、あるいは重要な案件なのかと思っていたのに。

こんなものか……

自分でなくても、木村坊ちゃまの法律事務所の誰かを適当に選んでも対応できる。

因果関係が明確なこの種の事件は、結果にそれほど差は出ない。

「こんな事件で私に依頼するなんて、あの法律事務所の連中は早めに転職したほうが……」遠山貴雲は事件ファイルを机の上に投げ出し、冷笑した。

田中局長は遠山貴雲の大言壮語を聞いて、額の血管が何度か脈打った。彼は咳払いをし、左手で口を隠しながら、声を潜めて言った。「遠山さん、この人は白川さんの友人なんです。」

「や、やられた」遠山貴雲は即座に姿勢を正し、手を伸ばしてファイルを再び手に取った。「白川さん、実を申しますと、私の最も得意とする分野は刑事訴訟なんです。」