「ちょっと考えてみましょう」順子さんは頭の中で考えを巡らせた。白鳥春姫が干されたというニュースが広まって以来、彼女と仕事をしたがる制作会社は一社もなかった。「私の同級生が『大永の世』のプロデューサーをしているの。オーディションの機会をもらえないか聞いてみましょうか」
「ありがとうございます」白鳥春姫は順子さんを見つめ、真剣な表情で言った。「順子さん」
順子さんは手を振った。
一方。
白川華怜は学校に戻った。
教室棟の前の階段で。
森園雄も戻ってきたところで、階段下で誰かと口論になっていた。周りには何重にも生徒たちが取り囲んでいた。
「もう一度言ってみろよ!」
坊主頭の男子生徒が彼に向かって叫んだ。「何度でも言ってやる。山田が人殺しだってことは誰でも知ってるさ。慈善家まで殺すなんて、ふん」