しかし、その後なぜか、二ヶ月間の改善命令を受けた。
老館長は心労が重なり、その後亡くなってしまった。
形意道場はそれを機に急降下し、生徒たちは皆、風撃館テコンドーへと流れていった。
藤野悟志は話し終えると、頭を掻きながら「でも金子館長は今、建設現場で働いているんです。周りの人は金子館長はすごく強くて、武術六段だって言ってます。どの道場でも指導者になれるはずなのに、なぜか土方をしているんです」と言った。
「六段が六段で、土方がなんだっていうの?」白川華怜は彼を一瞥し、ゆっくりと評した。「頭が固いわね」
藤野悟志は一瞬戸惑い、「そうですね、確かに」と思い至った様子だった。
だが、もし自分だったら、そんな面子は保てないだろう。
「うちの親戚に、昔勉強をサボってお箏を習っていた人がいて」藤野悟志はふと思い出して、「曾祖父に男のくせに女々しいと叱られて、それで母親と一緒に家を出て行って……」
白川華怜は頷きながら、その母親のやり方に強く同意を示した。
「今では、祖父たちがその親戚を位牌堂に入れたがっているんですが、会おうとしても全然会えないんです」藤野悟志は眉を上げた。
**
翌日、金曜日。
午後の放課後。
白川華怜は山田家を訪れた。表門では十五組の二人が山田のお母さんの荷物運びを手伝っていた。荷物は少なく、大半は昨日森園雄と白川華怜たちが片付けていた。
白川華怜は直接裏庭へ向かった。
裏庭では、白鳥春姫が階段に座って『大永』に関する本を読んでいた。監督は台本も役柄も渡していなかった。オーディションでは、その場でランダムに選ばれたシーンを演じることになっていた。
歴史上の人物を理解することで、より役柄に近づけるのだ。
「白川さん」順子さんは階段から立ち上がり、白川華怜の後ろを覗き込んだが、他の人は見当たらなかった。「お一人ですか?」
白川華怜は中に入り、カバンを白鳥春姫の隣の階段に置いた。「ええ」
白鳥春姫も本を置いて立ち上がった。
本はちょうどそのページが開いていた。黒い見出し——
【白川の母の死】
「じゃあ...先生は?」順子さんは口ごもった。
白川華怜は壁際に立てかけられた長槍に軽く目をやった。
黒い槍の柄は四尺余り、銀色の菱形の槍先には赤い房が付いていた。
夕陽の下、槍の柄は庭に細長い影を投げかけていた。