なるほど、なるほど。中村家に対して、白川華怜がずっと興味を示さなかったのも納得だ。
もし白川華怜が渡辺家の人間だったなら、それほど不思議ではないだろう。
「でも彼女は渡辺姓ではないわ」中村優香はその場にいる人々を見つめながら、声を潜めて言った。どんな表情や感情を見せればいいのか分からない様子だった。
田中湊は話を聞き終えて、やっと理解した。「彼女は運がいいね。渡辺社長が認めてくれれば十分だ。姓については...渡辺家は江渡でも基盤のある家柄だから、姓を変えるのは簡単なことじゃない。この安藤蘭という人物は...ただものじゃないな」
傍らで、中村修が頷いた。
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陽城刑務所。
山田は作業を終え、部屋に戻ると、ベッドの頭から筆記用具を取り出して課題に取り掛かった。
刑務所の部屋は狭く、一部屋に四人が収容されていた。