104木村さんを疑い、木村さんになる_2

なるほど、なるほど。中村家に対して、白川華怜がずっと興味を示さなかったのも納得だ。

もし白川華怜が渡辺家の人間だったなら、それほど不思議ではないだろう。

「でも彼女は渡辺姓ではないわ」中村優香はその場にいる人々を見つめながら、声を潜めて言った。どんな表情や感情を見せればいいのか分からない様子だった。

田中湊は話を聞き終えて、やっと理解した。「彼女は運がいいね。渡辺社長が認めてくれれば十分だ。姓については...渡辺家は江渡でも基盤のある家柄だから、姓を変えるのは簡単なことじゃない。この安藤蘭という人物は...ただものじゃないな」

傍らで、中村修が頷いた。

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陽城刑務所。

山田は作業を終え、部屋に戻ると、ベッドの頭から筆記用具を取り出して課題に取り掛かった。

刑務所の部屋は狭く、一部屋に四人が収容されていた。

隣はごつい坊主頭の男だった。

山田が本のページをめくった瞬間、トイレから出てきた坊主頭が「バン!」とタオルを投げ捨て、山田の髪を掴んで腹を殴りつけた。「背中をたたけって言ったの聞こえなかったのか?」

坊主頭はここの「ボス」で、誰も彼に手を出す勇気がなかった。

毎晩、毎朝の洗面は坊主頭が最優先だった。

部屋の残りの二人はベッドで縮こまり、この光景を見なかったふりをした。

山田は一度咳き込んだ後、ペンを置いて体を翻し、両手で坊主頭の首を掴んだ!

「ドン!」

二人は床に倒れ込んだ。坊主頭は力が強かったが、首を絞められてしまうと、いくら力があっても振り払えない。坊主頭の顔が徐々に赤くなっていった。

「バン!」

二人は鉄の扉に激しく衝突した。

この騒ぎでようやく看守が気付いた。

「ガチャ!」

扉が開いた。

山田は手を離し、隅に蹲った。

看守は警棒を構えながら周囲を見回した。「0147番、1108番、何をしている!?」

坊主頭は首を押さえながら、何か言おうとした。

山田が先に顔を上げた。彼は一度坊主頭を見てから、怖がるように視線を逸らし、「ぼ、僕は分かりません。ず、ずっと宿題をしていたんです」

これまでの日々で、看守たちは山田のことをよく理解していた。彼はどこにいても単語帳を持ち歩いて暗記し、一生懸命勉強する模範的な受刑者だった。

0147番に殴られるのも一日や二日のことではなかった。