もう一度顔を上げた時。
田中局長が入り口から出てくるのが見えた。
田中恭介は気を引き締めた。
「恭介」田中局長が近づいてきて、「何の用だ?」
「局長、ご存知ですか」田中恭介は真剣な表情で興奮気味に言った。「黒水通りで新しい軟膏が出たんです。人体の回復に非常に効果があって、大内…」
話の途中で、団地からのんびりと出てくる白川華怜と木村翼の姿が目に入った。
興奮した声は突然途切れた。
彼は声を潜め、白川さんに聞こえない音量で確認した。「大内補強軟膏というんです。でも限定販売なんです。」
武道家にとって、これは非常に魅力的な誘惑だった。
「知っているよ」田中局長はこの件を最初から知っていた。大野孝次側の人々と協力を求めて連絡を取っていたが、まさか彼らが自分たちでブランドを立ち上げるとは思わなかった。「しかし大野孝次は骨の折れる相手だ。」