二人とも階段を降りてくるのは木村翼だと思っていた。
木村翼の存在は二人とも知っていた。木村浩はどこにいても彼を連れていたからだ。
木製の階段の曲がり角に、雪青色のグラデーションのスカートの裾が見えた。
スカートには枝垂れ梅の刺繍が施されていた。
歩みに合わせて、一段一段と広がっていく。
二人は思わず顔を上げた。一人の女性だった。墨を流したような長い髪を木の簪で結い上げ、その顔は慵懶で艶やかだった。田中恭介は思い出した。前回会った女性だった。
なぜ彼女が?
しかも上の階から降りてきた?
田中恭介は驚いた。
木村浩はようやく白川華怜の方を見て、後ろの子供の姿が見えないことに気づき、「絵を教えるのに夢中で降りてくるのを忘れたのかと思った」と言った。
白川華怜はゆっくりと顔を上げた。「……?」