外には老人と若者がいた。
老人は煙管を手に持ち、顔には深いしわが刻まれていた。これが安藤蘭の父親に違いない。渡辺文寺は軽く腰を曲げて挨拶した。「安藤お爺さん、こんにちは。渡辺文寺と申します。」
そして白川華怜の方を見た。
陽城市の冬は寒くなく、彼女は整然と第一高校の制服を着て、黒髪を木の簪で束ね、肩には白いリュックを掛けていた。リュックには怠そうな猫の刺繍が施されていた。
片手にミルクティー、もう片手にスマートフォンを持ち、だらりと画面を見下ろしていた。
渡辺文寺は穏やかな声で「こんにちは、白川くん」と声をかけた。
白川華怜はゆっくりと顔を上げ、簡潔に「こんにちは」と返した。
余計な言葉は付け加えず、まさに渡辺泉が言ったように、礼儀正しかった。
渡辺助手も傍らに立ち、恭しく「白川さん」と挨拶した。
一行は席に着いた。
渡辺文寺は渡辺泉に劣らぬ場を和ませる能力を持っていた。彼は安藤宗次の興味を引きそうな話題を探り、「刺繡については、江渡御景図という国宝があると聞いています...」と話し始めた。
その話題を聞いて、安藤宗次は一瞬止まった。
そして驚いたように渡辺文寺を見つめ、表情が和らいだ。「最近の若い人はこういうことを知っている人が少ないですね。」
二人が話している間、安藤蘭は口を挟まなかった。
彼女は刺繡について渡辺文寺ほどの知識もなかったからだ。
白川華怜は下を向いてスマートフォンを見ていた。金子武人が写真を送ってきており、武道場の掃除が終わり、新しい武器も注文したとのことだった。内装の改修についても業者と相談中だった。
生徒募集は半月後だが、武道場は改装の必要がなく、必要な人に貸し出して副収入を得ることができた。
「週末に何人の友達が来るの?おじさんとおばさんが先に買い物をしないと」食事中、安藤宗次はこのことを思い出し、白川華怜に尋ねた。
「八人くらいです。」
森園雄と畑野景明たちだけだった。
「彼女は」安藤宗次は渡辺文寺の視線に気付き、説明した。「今回の月例テストで化学が40点だったので、クラスメートにご馳走することになったんです。」
白川華怜は一学期中、化学はほとんどずっと0点だったが、これが初めての40点だった。