117 最も恐ろしい人

「上原社長!」上原賢太の側近は白川華怜を知らず、「田中長邦」という名前も知らなかった。彼は冷たい表情で、数歩前に出ようとした。

しかし上原賢太に手で制止された。

側近は白川華怜を睨みつけながら、一歩後ろに下がった。

また白川華怜から田中局長の名前を聞いた。

彼の人脈はもう多くは残っていない。今日は中村家と田中家の力を借りて金子武人に道場を売らせようとしただけだった。

しかし上原賢太が予想していなかったのは、金子武人は脅されたのに。

むしろ、まだ若い高校生の白川華怜が全く動じなかったことだった。

「田中長邦」という三文字は上原賢太に大きなプレッシャーを与えた。

上原賢太の柔和な表情が徐々に消え、白川華怜の顔をじっくりと観察し、そして地面に落ちた携帯電話をゆっくりと拾い上げた。

携帯電話を強く握りしめ、目に殺意が浮かぶ。白川華怜の背後には一体誰がいるのか?

最後に白川華怜と金子武人の顔を見て「帰るぞ」と言った。

「でも——」風撃館道場はこの土地を長年狙っていた。このまま引き下がるのは納得がいかなかった。

しかし上原賢太はすでに庭の門を出て行った。

側近は白川華怜を睨みつけ、唾を吐いてから去って行った。

一人だけ残った。

元気で明るい天使の宮山小町は金子奥様の腕にしがみつき、田中美依を見る勇気がなかった。

田中美依は当然彼女を見ようともせず、腕を組んで白川華怜に暗い声で言った。「白川、山田のことはどうなってるの?」

彼女も学校で多くの人に聞いたが、十五組の生徒たちは彼女を見ると震え上がった。

話が噛み合わなかった。

白川華怜は十五組の教師たちから目の中の瞳のように大切にされ、田中美依が毒のように近づけないようにされていた。その他の時間は勉強に専念していた。

白川華怜も身を屈め、無関心そうに契約書を拾い上げ、軽く息を吹きかけながら、さりげなく答えた。「正義の味方をして捕まったのよ」

彼女は軽々しく言った。

田中美依はもちろんこの答えに満足せず、一歩前に出た。