119 きっと私の物理が足りないんだ。

白川華怜が階下にいた時。

木村翼は食事を終えると椅子から飛び降りて二階へ向かった。

木村浩は無造作に椅子の背もたれに寄りかかっていた。マイクはオンだがビデオはオフで、表情は無表情。山田文雄が文献報告をしており、大画面には英語のパワーポイントが映し出されていた。

木村翼に気付いたが、木村浩は無視した。

木村翼は下を向いてゆっくりと腕時計をいじり、時々彼を横目で見ていた。

木村浩は何か様子がおかしいと気付き、マイクをオフにして指で机を叩き、木村翼を呼び寄せた。

木村翼は横に座り、相変わらず自分の腕時計に夢中で、彼を無視していた。

木村浩:「……」

木村翼は真っ黒な瞳で木村浩の前に置かれたお茶を見つめた。

よし。

木村浩は片手でカップを取り出し、お茶を注ぎ、立ち上がって彼の前に置くと、唇を歪めて「飲め」と言った。