白川華怜は先生たちが自分の成績について話し合っていることを知らなかった。
彼女は今タピオカ店で本を読んでいた。遠山貴雲がケーキを持って向かい側に座り、新商品を勧めながら、彼女が持っているA4用紙の束に目を留めた。
何気なく一目見たつもりだった。
その内容を見た後、遠山貴雲は自分のケーキで咽せ、すぐにナプキンを取り出して口元を拭った。「レビュー論文を読んでるの?」
彼が卒業してからこんなに経つのに、今の学生たちはここまで頑張っているのか?
修士課程どころか、大学にも入っていないのに、もうレビュー論文を読み始めているなんて?
白川華怜は一ページめくって、「うん」と答えた。
木場院長から送られた圧縮ファイルと、何ページもある専門書。この二ヶ月は物理の問題を解く時間を減らし、空き時間にレビュー論文を読んでいた。専門書はまだ一冊も買っていない。