伊藤満は頭を掻いた。
白川華怜が何をするつもりなのか分からなかった。大きな荷物の運び出しでも手伝うのかと思っていたので、人手が足りないかと心配していた。ななから白川華怜が到着したと連絡がなければ、もっと人を集めようとしていたところだった。
白川華怜はバーに向かって歩き続けながら、「荷物はトランクにあるわ。中に運んで」と言った。
伊藤満は手を振って指示を出した。黒服のボディーガードがトランクを開けると、質量分析装置が置かれているのが見えた。
「お二人の先生」ボディーガードたちは当然、質量分析装置など見たことがなく、精密そうな機器なので触るのを躊躇した。「これ、このまま運んでも大丈夫でしょうか?」
ボディーガードは車の後部ドアに手を置いたまま。
恐ろしげな顔つきながら、白衣を着て胸に名札を付けた中田先生に丁寧に尋ねた。