すれ違いざまに、彼は白川華怜のあまりにも優れた顔に気づき、もう一度見つめた。
他人がダウンジャケットを着ると少しもたつく感じがするのに、白川華怜は特に痩せて見えた。白いダウンコートには精巧な蔦と猫の刺繍が施され、背が高くて、色白で、その顔は艶やかでありながら媚びることなく、眼差しは物憂げだった。
「あれは誰?」高橋謙治は振り返ってもう一度見た。
側にいたスタッフが振り返って、「研修生だと思います」と答えた。
高橋謙治は頷いた。
白川華怜が広報室に着くと、校門にも一行が到着したところだった。
ほぼ同時だった。
広報室。
責任者と木場院長が揃っていて、室内は暖房が効いていた。白川華怜が手を伸ばしてドアを閉めようとすると。
木場院長はお茶を置き、手を上げて、「閉める必要はない、そのまま入って座りなさい」と言った。