名門望族、偶然の出会い_2

「高橋博士、つまり現在はまだ汎用計算はできず、特定の問題しか処理できないということですか?量子超越性はどこにあるのでしょうか?」

高橋謙治は本田直哉を一瞥し、手を振って座らせた。「その原理は光電効果とさほど変わらない……」

「高橋博士……」真ん中にいた浪川輝明も質問しようとした。

高橋謙治は浪川輝明を見たが答えず、講義を続けた。これで他に質問したい人も発言を控えた。

そのとき、教室の前の扉がノックされた。

高橋謙治は眉をひそめ、不機嫌そうに扉の外を見た。全員の注目がそちらに集まった。

扉が開いた。

黒いニット帽を被った老人が現れた。両こめかみの白髪だけが見え、その黒く沈んだ目には歳月の重みが宿り、顔には深い皺が刻まれ、威厳が感じられた。

「木場院長?」高橋謙治はその老人を認めると、不機嫌さは消え、非常に興奮した様子で「私の講義を聴きに来られたのですか?!」

高橋謙治のその言葉を聞いて。

静かだった教室が一瞬にして騒然となった。

先ほど言ったように、国内最高の栄誉は院長であり、院長がいる大学は一流校とされる。しかし一流校同士にも差があり、木場院長はその中でも傑出した存在で、その功績は言うまでもない。

院長グループの中でも彼はトップクラスで、彼の研究テーマに多くの人が参加を望んでも叶わない。

その場にいた松木皆斗や畑野景明たちはまだ研究界のことをよく知らず、木場院長が具体的に誰なのかわからなかったが、名家出身の高橋謙治の木場院長に対する態度を見るだけでも、その重要性が分かった。

木場院長は高橋謙治を見て、「気にしないで、続けてください。私はただ散歩がてら立ち寄っただけです」

そう言いながら、教室全体に目を走らせた。

教室には女子学生が二人だけいた。一人は真ん中の渡辺千月で、眼鏡をかけ、附属中学校の制服を着ていた。

木場院長は二人目の女子学生に目を向けた。

彼女も木場院長を見ていた。手にペンを回し、左手で印刷された書類を無造作に押さえていた。

間違いなく、この子だ。

木場院長は白川華怜の後ろに空席があるのを見て、全員の視線を浴びながら落ち着いた様子で白川華怜の後ろに座った。

木場院長の来訪により、高橋謙治の講義は一層熱を帯びた。

4時間以上の講義はあっという間に終わった。