「高橋博士、つまり現在はまだ汎用計算はできず、特定の問題しか処理できないということですか?量子超越性はどこにあるのでしょうか?」
高橋謙治は本田直哉を一瞥し、手を振って座らせた。「その原理は光電効果とさほど変わらない……」
「高橋博士……」真ん中にいた浪川輝明も質問しようとした。
高橋謙治は浪川輝明を見たが答えず、講義を続けた。これで他に質問したい人も発言を控えた。
そのとき、教室の前の扉がノックされた。
高橋謙治は眉をひそめ、不機嫌そうに扉の外を見た。全員の注目がそちらに集まった。
扉が開いた。
黒いニット帽を被った老人が現れた。両こめかみの白髪だけが見え、その黒く沈んだ目には歳月の重みが宿り、顔には深い皺が刻まれ、威厳が感じられた。
「木場院長?」高橋謙治はその老人を認めると、不機嫌さは消え、非常に興奮した様子で「私の講義を聴きに来られたのですか?!」