120 冷酷な伊藤坊ちゃま、田中局長ドン引き(2)

彼女も一緒に行くという意味だ。

赤信号。

田中局長は車を止め、バックミラーを見ながら、「白川さん、明...」

「明石くん?」白川華怜は顔を上げ、誠実に田中局長に尋ねた。「私が明石くんの保護を必要としていると思っているの?」

田中局長は黙ってアクセルを踏んだ。

白川華怜を黒水路地バーまで連れて行った。

8時近く。

バーの照明は暗く、スポットライトが無差別に照らし、タバコとお酒の匂いが冷気と混ざって顔に当たる。フロアの中央にはいくつものステージがあり、男女が入り混じってダンスをしている。

田中局長はこの光景に慣れているが、ここが黒水路地のバーだけに緊張していた。

「白川さん、近くに...」

振り返ると、白川華怜はイヤホンを付けて単語を覚えており、その姿はのんびりとして、彼よりもリラックスしていた。

田中局長:「...」

白川さんは本当に凄い人だ。

今回は何も言わずに、直接白川華怜を2階の豪華な個室へ案内した。

ドアが半分開いた。

個室にはすでに多くの人が集まっており、国内外の人々がいた。照明は暗く、小さなバーカウンターの上で細かな光が回っており、多くの人々がすでにグラスを手に会話を交わしていた。

「田中さん、やっと来られましたね」原野部長は田中局長を見て、ようやく心の支えを見つけたかのように、隅から出てきた。

そして興味深そうに白川華怜を見た。

彼は覚えていた。田中局長が入ってきた時、白川華怜のためにもう一方のドアを開けたことを。

田中恭介と吉田瑞希はグラスを手に、背の低い中年男性と会話をしていた。

話しているのは国語ではなかった。

白川華怜はその中年男性を一瞥した。

彼女の視線に田中恭介は気付き、誰がこちらを見ているのか振り返ろうとしたが、チラリと見た先に田中局長の隣にいる白川華怜を見つけた。

田中恭介は一瞬固まり、眉をひそめながら、笑顔で中年男性と乾杯してから、田中局長の方へ歩いてきた。

「なぜ彼女を連れてきたんだ?」田中恭介は白川華怜を一瞥し、眉をひそめた。

田中局長は原野部長にだけ言った:「白川さんを座らせてあげてください。」

原野部長はすぐに白川華怜を脇へ案内した。

人が離れてから、田中局長は田中恭介を見た。昨日の件で、彼は田中恭介と吉田瑞希とは一線を画していた:「たまたまね。」