131華怜さん専用の席(2/2)

松木皆斗もよく分からなかった。

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白井沙耶香の二人はドレスの試着を終えて井上家に戻った。白川明知は森中社長と話をしていて、二人は協力関係について話し合っていた。白川家が江渡に進出するのはそう簡単ではなかった。

「お二人帰ってきたの?」白井沙耶香が江渡音楽学院に入学してから、森中社長は彼女に対して随分優しくなっていた。「皆斗と圭介君に会ってきた?」

「兄は実験室にいて、出てこられないそうです」白井沙耶香はソファに座り、落ち着いた様子で答えた。

森中社長は少し残念そうだった。「休みが取れたら必ず来させるよ」

松木奥様は白川明知と話す機会を見つけた。「今日、博源塾で白川華怜を見かけましたわ」

「あの子が?」白川明知は眉をひそめた。

白川華怜のことを思い出すと、自分に逆らった件を思い出さずにはいられなかった。もし後で藤野院長に会える機会がなければ、白井沙耶香は確実に遅れをとっていただろう。