132 白井沙耶香の驚愕、田中局長は招待状を求める

白川華怜が入ってくると、彼女に向けられた視線を感じた。

少し目を上げると、松木皆斗の隣に立つ白井沙耶香が目に入った。

軽く一瞥しただけで、すぐに視線を戻した。

「パソコン持ってきたの?」空沢康利は白川華怜が入ってくるのを見て立ち上がり、椅子を引いてあげた。「データを送るから……」

「データの処理は終わったよ」畑野景明も顔を上げた。

白川華怜は椅子に座り、パソコンを手近に置いた。

コートを脱ぎ、パソコンを開いてドキュメントといくつかのソフトを立ち上げた。

彼女のタイピングはゆっくりで、二本指だけを使っていた。初めて彼女のタイピングを見た空沢康利は一瞬黙り込んだ。

代わりに打とうかと言いかけた。

でも白川華怜の国語150点の成績を思い出し、自分には資格がないと悟った空沢康利だったが、それでも本当にタイピングを手伝いたかった。

大野旭はちょうど椅子を持ってきて、松木皆斗たちの近くに置いた。「松木、椅子持ってきたよ」

そう言うと、自分の椅子に戻り、身を乗り出して白川華怜と学術研究の発表をどこから書き始めるか相談を始めた。

松木皆斗の隣で、白井沙耶香は表情を引き締めていた。彼女は白川華怜の後ろ姿をじっと見つめ、これが現実だと確信するまでにかなりの時間がかかった。ほとんど信じられない様子で松木皆斗を見た。

アプリで博源塾について話題になっていた。天才の中の天才が集まる場所で、入塾できる者は全員江渡大学の有望株だった。

江渡附属中学校の生徒たちも必死になってここに入ろうとしていた。

夏期講習では江渡大学の教授による講義があるだけでなく、彼らが丹精込めて作った問題もあった。優秀な成績を収めれば、大学入学前から教授に目をかけられ、一年生のうちから研究室で手伝いができるかもしれない。

運が良ければ、トップクラスの研究室に入れるかもしれないし、某院士に目をかけられるかもしれない。

直弟子になることだって、不可能ではない。

自分でさえ入れなかった博源塾に、白川華怜がいるなんて、一体何の資格で?

博源塾は数理系が中心なのに、白川華怜はここの問題が理解できるのだろうか?

白井沙耶香は松木皆斗を見つめ、驚きと疑問が顔に浮かんでいた。

松木皆斗は軽く頷いた。