136 大学入試の賭け

山田文雄?

西町に住む大野旭にとって、それはまさに伝説的な人物だった。

山田文雄が江渡大学で無敵の存在であり、江渡附属中学校が彼の名を江渡に掲げたがっていたことを考えると、西町ではどれほどの栄誉を持っているのだろうか?

教室の中央の列で、大野旭、藤田道夫、松木皆斗らは、講壇にだらしなく寄りかかっている白川華怜をじっと見つめていた。

白川華怜は山田文雄を知っているのか?

しかも一緒に数理モデルを作ったとか?

大野旭の前に座る浪川輝明は、ため息をついて笑みを浮かべ、講壇に立つ白川華怜を注視しながら言った。「この前まで山田先輩の話をしていたのに、今度は山田先輩と一緒に数理モデルを作ったなんて。江渡でさえ、今山田先輩に会える人はほとんどいないのに、自分が共著者だなんて言うなら、僕だって山田先輩と一緒に研究室で実験してたって言えるよ!」

山田文雄という名前は、学生の間だけでなく、博士指導教授の間でも有名だった。

それは彼の才能だけでなく、彼の経験した出来事、指導教授からの抑圧と搾取、論文発表の妨害...そして最後に思いがけず木村研究所に入ることができたことも理由だった。

学閥の世界は財界よりもずっと深い。一介の庶民が頭角を現すのは容易なことではない。

しかし山田文雄は木村家に見出されたのだ。

多くの博士指導教授が彼の運を羨んでいた。

彼が今日の名声を得られたのは、才能、努力、運が揃っていたからこそだ。

周知の通り、木村研究所に入った人々はほとんど世間と隔絶され、重要な場面以外ではめったに姿を見せない。

今、黄原主任たちも高橋謙治から、このモデルが山田文雄の論文の一部だと知ったばかりだった。

「なるほど、彼のものか...」黄原主任はため息をつき、それなら理解できると思った。

木村浩の配下の人々なら、明日にでも制御核融合を研究開発したとしても、黄原主任は不可能ではないと思うだろう。

しかし、白川華怜が山田文雄のモデルに参加したと言い出したことは、まるで幼稚園児が大学生のコンペに参加したと言うようなものだった。

もし他の誰かがそう言ったなら、黄原主任は一笑に付すだろう。

妄想だと思うだろう。

しかしそれを言ったのは白川華怜だ。黄原主任は横目で木場院長を見た。